日本の犬・猫飼育数は現在およそ1605万頭(ペットフード協会調べ)で、これは2022年の子ども人口およそ1465万(総務省調べ)を大きくしのいでいます。つまり日本はこどもの数より、犬・猫の数が多いペット大国。ここ数年はコロナ禍により自宅で過ごす時間が増えたことで、家での時間をより楽しいものにしようと犬・猫を新たに迎える人も増えているとか。

そこで気になるのは夏休みなどのバカンス先での過ごし方。もちろんペットホテルやペットシッターなどのサービスを利用して、ゆっくり旅を楽しむのもありですが、愛犬(猫)家なら一緒に旅を楽しみたいと思うこともあるのでは? そこで、今回は愛犬を連れての旅事情にくわしいトラベルライター、長谷川あやさんにおすすめの「イヌ旅」デスティネーションを聞きました。

長谷川あや AYA HASEGAWA

フリーライター。子どもの頃、実家で飼っていたコリー以来、ン十年ぶりに、2015年1月より犬(ミニチュアダックスフンドのケリー)との生活がスタート。早起きのケリーの影響ですっかり朝方に。コロナ禍で遠出ができなくなったことをきっかけに、愛犬との旅行に目覚める。

「最近では、犬と一緒に泊まれるドッグ・フレンドリーなホテルも増えてきました。顕著な例では、『星のや』で知られる星野リゾートの温泉旅館ブランド『界』(全国22か所で展開)では、各施設に必ず一部屋のドッグフレンドリールームを新設すると発表しました。また、いままでペットを受け入れてこなかった高級ホテルが新たに犬連れステイプランを販売するケースも多数。

都内を例に挙げるなら『ザ・ペニンシュラ東京』(日比谷)は以前からドッグステイプログラムを販売していましたが、最近は『ザ・キャピトルホテル 東急』(溜池山王)もドッグフレンドリー宿泊プランをスタート。新しいホテルで言えば『キンプトン新宿東京』(新宿)は全館あげてドッグフレンドリーを謳っているので、ロビーやレストランにも犬連れで入れるというのが愛犬家から絶大な人気を得ています。

ここで注意したいのが、一言でドッグフレンドリープランと言っても、その内容はまちまちであること。たとえば、館内では犬をケージに入れなくてはいけないホテルと、抱っこならそのまま連れていけるホテル、はたまたリードをつければフロアを歩かせてもいいホテル、とその対応はそれぞれ異なります。

またゲストルーム内であっても、ケージに入れておかなくてはいけないホテルと、なかにはベッドに上げてそのまま一緒に寝てもいいなんて太っ腹なホテル(例:『ザ・キャピトルホテル 東急』)も。旅するスタイルによって、ホテルに求めることもさまざまだと思うので、まずはパブリックスペースへ入れるのかどうか、室内では自由に過ごせるのか、を確認することをおすすめします。

さらには食事の時間もポイントです。通常の旅であれば、食事はホテル内外のレストランへ食べに出かけますが、その間、犬たちはゲストルームでひとりお留守番をするわけです。慣れない環境で数時間を過ごすことで不安になり、キュンキュン、ワンワンと吠える犬たちも珍しくありません。そこで、私がよく利用するのはインルーム・ダイニングです。ここもホテルによって、レストランと同クオリティ―の食事を提供してくれるところと、インルーム・ダイニング用のメニューしか提供しないところと、種々ありますので、事前にチェックしておきましょう。もちろん、犬連れで一緒にレストランへ行けるのがベスト、ではありますが。

愛犬ケリーと旅をする長谷川あやさん。

最後に、犬と一緒に旅をするうえで、クリアしておきたいマナーについて。『旅の恥はかき捨て』とばかりに、部屋を汚すことのないよう、トイレトレーニング(トイレシートの上で排泄させるしつけ)は必ず済ませておきましょう。私の愛犬ケリーには、室内では必ずマナーパンツ(おむつ)を履かせるようにしています。また、お留守番時になるべく吠えないで待てるよう、『待て』のトレーニングも出来ていればなおよいですね。毛がたくさん抜ける換毛期のステイは、できるだけ避けるのもエチケットのひとつかもしれません。

多くのドッグフレンドリープランではトイレシートが用意されているほか、そのホテルならではのペット用おやつは食事も用意されています。ただ、食べ慣れないものは食べない子もいますので、慣れているフードやおやつを少し持っていくとよいでしょう。

『イヌ旅』は回数を重ねていくうちに、犬も慣れてきて、見慣れぬ風景を楽しそうにお散歩してくれるようになります。いつもとは違うゲストルームをうれしそうにウロウロする愛犬を眺めながら、ゆったりとシャンパンを飲んで非日常を味わうのは格別です。ぜひ愛犬と一緒に『イヌ旅』を楽しんでください」

長谷川あやさんおすすめのドッグフレンドリーなホテル リゾート編

レジーナリゾート箱根 雲外荘

ドッグフレンドリーなホテルとして全国8か所で展開している「レジーナリゾート」、なかでも私のおすすめは2014年オープンと比較的新しい、箱根の「雲外荘」です。全10室のゲストルームにはすべて源泉かけながしの温泉(露天風呂)があるので、愛犬と一緒に温泉を楽しめる(浴槽に入れるのはNG)のが最高。

「レジーナリゾート箱根 雲外荘」のゲストルームは露天風呂つき。
犬専用のセルフスパスペースもあるから、外で泥んこになって遊んでも安心。
トイレシートやおやつなどはもちろん、クレートや足ふきタオルも完備。手ぶらで行けます。

お部屋でいただく食事(和食)もおいしく、温泉旅館としても充分楽しめるのですが、ほかにもドッグフレンドリーリゾートのパイオニアらしく、外から館内へ入る際にさりげなく足を洗うスペースと小さなタオルが置かれていたり、うんち袋を捨てられるようになっていたり。愛犬家のかゆいところに手が届くホスピタリティが随所に見られます。

レジーナリゾート箱根 雲外荘

住所/神奈川県足柄下郡箱根町強羅1300-46

電話/0460-82-3111(10:00~18:00)

https://www.regina-resorts.com/hakone/

リゾナーレ八ヶ岳

日本有数のワイン産地である山梨県のワインリゾート「リゾナーレ八ヶ岳」では、2020年に「レジデンステラス付愛犬ルーム」をリニューアルオープン。およそ70㎡の広々とした室内は撥水加工された床材で、極力段差を少なく設計されています。

美味しい食事でも知られている「リゾナーレ八ヶ岳」では、ホテル内のふたつのレストランで犬を連れての食事が可能。メインダイニング「OTTO SETTE」では個室でイタリア料理のフルコースとワインのペアリングを楽しめます。ほかにも、人も犬も一緒に食事を楽しみたいなら、施設内「ピーマン通り」にある野菜とジビエが味わえるカフェ「べジビエ」で、犬用のハンバーグ「ワンバーグ」を提供しているほか、「ピーマン通り」の7つのレストランでテイクアウトサービスを展開しているから、気分と好みに応じて部屋での食事も可能。大人数でそれぞれ食べたいものが異なるときなど、助かります。

愛犬にとって「イヌ旅」の楽しさは、都会にいては味わえない自然のなかでお散歩することだと思いますが、「リゾナーレ八ヶ岳」では犬用のアクティビティも充実。夏はカヤック、冬はスノーアクティビティで一緒に遊べます。

リゾナーレ八ヶ岳

住所/山梨県北杜市小淵沢町129-1

電話/0570-073-055 (9:30~18:00/リゾナーレ予約センター)

https://risonare.com/yatsugatake/

奥入瀬渓流ホテル

プライベートテラスから渓流を望める「奥入瀬渓流ホテル」の客室。

同様に食事が楽しみなのが、この「奥入瀬渓流ホテル」。青森のフレッシュな食材を洗練された技法で仕上げたフランス料理のフルコースはここでしか味わえないもの。渓流沿いのテラスで食前酒とアミューズを味わう「渓流アペリティフ」が最高に気持ちいいんです。その後はメインダイニングに移動しますが、専用のケージが用意された個室で料理が提供されるため、愛犬と一緒にゆっくりディナーを。愛犬も普段味わえない美味しいディナーにビックリするはず。

「渓流アペリティフ」や朝食が楽しめるテラス。
犬用のディナーはビーフ、チキン、魚などのパテや野菜のミンチ。おいしそう。
ガイド付きのツアーはオプションで所要時間3時間30分、ひと組22,000円(税込)。

愛犬を連れての渓流をウォーキングするプライベートツアーも開催されているので、新緑や紅葉の季節にぜひ再訪したいホテルのひとつです。

奥入瀬渓流ホテル

住所/青森県十和田市大字奥瀬字栃久保231

宿泊予約/0570-073-022(9:30~18:00)

https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/oirasekeiryu/

 

THE HIRAMATSU軽井沢 御代田

広々とした専用のドッグランがある「THE HIRAMATSU軽井沢 御代田」。

そうそう、美食なら「ひらまつ」も忘れてはいけません。2021年にいま注目のエリアである御代田(長野県)にオープンした「THE HIRAMATSU軽井沢 御代田」はすべてにおいて抜きんでたクオリティを追究するラグジュアリーなリゾート。美食家たちが集う“森のグラン・オーベルジュ”を標榜しています。

広々としたヴィラなので別荘感覚でステイできる。

当然、犬用のケージも大変広く、専用のドッグランもとっても広い! ブランケットやベッド、おやつなどアメニティも豊富で、まさに選ばれしエリート・ドッグのためのリゾートです。

THE HIRAMATSU軽井沢 御代田

住所/長野県北佐久郡御代田町大字塩野375番地723

宿泊予約/0267-31-5680(9:00~18:00)

https://www.hiramatsuhotels.com/miyota/

Text by Miyako Akiyama

#ロードサイド ストーリー
愛犬と一緒に旅をする「イヌ旅」ステイ8選 【後半】
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