エコと旧車趣味が両立する
今回のオートサロンの出展内容から感じたトレンドは、以下の4つだった。
まずひとつは、BEVや水素エンジンによる脱炭素やカーボンニュートラルの流れ。2番目は、SUVでアウトドアを楽しむアクティブなライフスタイルへの憧れ。3番目が、モータースポーツ人気の復活という潮流。そして4番目が、旧車やクラシックカーが人気を集めていることだった。
なかでもおもしろいと感じたのが、上記4つのトレンドのうち、2つが重なっているもの。たとえばトヨタが提案した「AE86 H2 Concept」と「AE86 BEV Concept」は、脱炭素の取り組みと旧車趣味のクロスオーバーだ。
また、マツダが展示した「MAZDA SPIRIT RACING MAZDA2 Bio Concept」は、カーボンニュートラルなバイオディーゼル燃料でレースに参戦するためのマシン。
トヨタが発表した「GRヘリテージパーツプロジェクト」は、懐かしのランドクルーザー70などの旧車の補給部品を復刻する取り組み。これで、旧車趣味とアウトドア趣味が両立することになる。 これまで、「こちらを立てれば、あちらが立たず」だと思われてきた「環境性能」「アウトドア志向」「モータースポーツ」「旧車趣味」などが、両立する可能性を示したことが実に興味深い。ライフスタイルの多様化というと使い古された言葉であるけれど、さまざまな趣味嗜好のクルマ好きが、自由にクルマを楽しめる時代がやってくるという、前向きな予感が収穫だった。
古くて新しい、ポルシェでキャンプ
「TOKYO AUTO SALON 2023」が開催された幕張メッセの北ホールでは、「TOKYO OUTDOOR SHOW 2023」が併催された。ここでも東京オートサロンと同様に、異なるクルマ趣味のクロスオーバーが見られて、実に興味深かった。
アウトドアとクルマの関わりといえば、かつてはSUVというのが相場だった。もちろんSUVとアウトドア趣味の親和性の高さは認めるけれど、スポーツカーでアウトドアを楽しむような多様性があってもいいはずだ。
こんなことを感じたのは、ポルシェが911用の純正ルーフテントを発売したからだ。ポルシェでキャンプに行くという意外な組み合わせに、思わず“ギャップ萌え”してしまった。 けれどもよくよく考えてみれば、ポルシェでキャンプというのは特に目新しいことではない。というのも、ポルシェ911はダカール・ラリーに参戦していた歴史があるからだ。そんな史実を振り返ると、改めてポルシェ911というモデルの万能スポーツカーぶりに、感心してしまう。
アクティブなライフスタイルを提案する
トヨタとレクサスは、東京アウトドアショーに初出展。まずトヨタは、最低地上高を引き上げ、オールテレインの大径タイヤとルーフレールで“武装”した「CROWN OUTDOOR CONCEPT」を展示。このコンセプトカーは、クラウン・クロスオーバーが持つ活動的なキャラをさらに引き出しており、市販化すれば人気車種になると確信した。
レクサスは、アウトドアを快適に楽しむための専用パーツを装備した「RX OUTDOOR CONCEPT」と、未来のバギーを思わせる水素エンジンを搭載した「ROV CONCEPT 2」、そして過酷な条件下での本格的なアウトドア活動を見据えた「GX OUTDOOR CONCEPT」を展示。いずれも、アウトドア趣味を楽しんでいる人、これからアクティビティにチャレンジしたい人の心に響くコンセプトカーだった。 クルマが好きだからアウトドアにチャレンジしたくなる。アウトドアを楽しみたいからクルマが欲しくなる。トヨタとレクサスの展示を眺めながら、クルマとアウトドアの相乗効果に思いを馳せた。