毎年恒例のグッドウッドハウス前に現れる巨大インスタレーション。今年はポルシェ75周年がテーマとなった。

世界を代表する自動車文化の祭典

アメリカ・カリフォルニア州の高級リゾート地で開催される「モントレー・カー・ウィーク」と並んで、世界を代表するモータースポーツの祭典として知られる「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード(FoS)」。イギリスの首都・ロンドンから南西にクルマで2時間ほど走ったところにあるウエスト・サセックス州グッドウッド・エステートで毎年行われている。

熱狂的なファンのみならず、ファミリーで楽しむモータースポーツイベントとしても定着している。

1993年、のちのリッチモンド侯爵となる当時のマーチ卿が自身の邸宅を舞台に始めたのがその起源となるFoS。2023年バージョンは、7月13日(木)の“プラクティスデー”を皮切りに日曜までとなる4日間の日程で幕を開けた。

自動車史にその名を深く刻む新旧の伝説的レーシングカー、世界初のお披露目ともなる最新スーパーカー、そして見るも貴重なプロトタイプといった希少なクルマの数々のみならず、ファンを熱狂させるプロドライバーが毎年登場するとあって、FoS開催期間を通して20万人以上の観客を動員する一大イベントだ。

ハリウッド女優、レネー・ゼルヴィガーの姿も。

あいにくの雨にも負けない熱狂

例年は、イギリスの夏らしいカラッとした暑さと目に眩しい(貴族の領地ならではの)ふんだんな緑が目に眩しいFoSだが、今年の2日目となった金曜日はあいにくの雨。しかし、それもまたイギリスらしいというべきか、ファン・ドライバーとも悪天候に意気消沈することなく、「自動車文化の祭典」を思う存分楽しむ様子が会場各所に見受けられた。

“The Beast of Turin”(トリノの猛獣)のニックネームをもつ「フィアット S76」がヒルクライムコースを駆け上がる。

このFoSのメインイベントは、なんといっても「ヒルクライム」。リッチモンド侯爵領地を約1.16マイル(1.85キロ)にわたって斜めに横断するアイコニックなコースで競われる。

2023年の幕開けを担ったクルマの一つが「メルセデス・ベンツ SEL 6.3」(1970年)。シンプルなシルバーボディに履いたタイヤを煙らせながら興奮のスタート。さらには、カルン・チャンドックがハンドルを握る「スバル・インプレッサ」(1993年)やヒュンダイの「エラントラ N TCR」(2023年)、フェラーリのスペシャル・プロジェクト・プログラムによる「フェラーリ KC23」、世界的ラリードライバーである故ケン・ブロックのために造られた「アウディ S1フーニトロン」(2022年)などが、これまたFoSお馴染みのヘイベイル(藁で作られたガードレール)を両脇に敷き詰められた狭きコースを駆け抜けていった。

「マクラーレン F1 M29」。マクラーレン・レーシング60周年記念も、今年のFoSを盛り上げたテーマの一つだった。
ウェットコンディションの中を駆け抜ける「フェラーリ 250 GT Breadvan」。
ヒルクライム出走を待つ「メルセデス AMG-Petronas F1」。
2輪の世界で活躍したサミー・ミラーとランディ・マモラもFoS会場に姿を見せた。

ジェンソン・バトンで興奮は最高潮

しかし、雨に煙ったこの日を一番盛り上げたのは、2009年にF1に輝いた経歴をもつジェンソン・バトン。今年のルマン24時間レースに“Garage 56”枠で参戦したレーシングカー「シボレー・カマロ ZLI」(2023年)のハンドルを握って会場を大いに沸かせた。

「少し大きめのリアウイング、ダウンフォース、ハドルシフト、シーケンシャルギアボックスなどNASCARの特徴をそのままにルマン仕様にしたこのクルマはこれまで運転したどのレースカーよりもドライバビリティがとても高いと思う。本当に運転していて楽しいクルマだったよ。このプログラムに関わることができて本当に嬉しいね」

Friday full highlights | Festival of Speed 2023

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