被写体としても、地質学的な側面からも魅力的なジオパーク
「僕は普遍的なものにとても惹かれるのですが、写真にも時代を越えても魅力が色あせないものがあって、常々そんな作品を撮りたいと思っています」
そう語るのは、ライフスタイル誌をはじめ、広告や建築、グラビアなど幅広い分野で活躍する写真家の秋田大輔さん。特にライフスタイル誌では、「冒険とエレガンス」をテーマに、世界各地の秘境やリゾートなどを撮影し、そのハイエンドなライフスタイルを写し出した作品で注目を集めている。
そんな秋田さんが、作品撮影のために1泊2日のロードトリップへ。カメラ機材やトラベルグッズを収めるのは、ハンティング・ワールドの新シリーズ「バチューオリジンネオ」だ。
探検旅行をライフワークにしてきた同ブランドの創設者、ボブ・リーは、自らの経験と情熱により、耐久性や撥水性、緩衝性などに優れ、苛酷な自然環境にも耐え得るシグネチャー素材「バチュー・クロス」を生み出した。
バチュー・クロスの3層構造はそのままに、各クロスに使用される素材自体を初めてバージョンアップし、雨や湿気などの水分に対する耐候性や耐久性をさらに向上させた「ネオバチュー・クロス」。この新素材を纏ったバチューオリジンネオは、水分や湿気に弱いカメラ用としても、最適なバッグといえるだろう。
一方、旅の足となるのは、ボブ・リーがアフリカ探検の際に愛用したランドローバー シリーズⅠをオリジンとする最新のディフェンダー。今回のディフェンダーはシリーズⅢのCOUNTYモデルをオマージュしたかのようなスタイリング、ランドローバーの名に恥じない悪路走破性、そして現代のクルマならではの快適性を兼ね備えたクロスカントリーSUVだ。
まだ空が白む前、静まりかえった都心を発った秋田さんは一路、西へとディフェンダーを走らせる。目指すは伊豆半島東部の伊東・城ヶ崎エリアだ。
「僕はジオパークにとても興味があって、海外でも各地のジオパークで撮影しているのですが、今回の目的地である伊豆半島もジオパークに認定されているんです」
ジオパークとは、地球科学的に意義のある地質遺産を保護し、そうした資源を科学研究や教育、地域振興などに活用している地域であり、ユネスコによって認定される。世界46カ国で177のユネスコ世界ジオパークが存在し、日本では伊豆半島のほかに、洞爺湖有珠山や隠岐諸島、阿蘇など9地域が登録されている。
「ジオパークは特異な地形を特徴としているエリアが多く、被写体として面白いのですが、そうした地形を生み出した大地の生い立ちやメカニズムなど、地質学的な側面にも興味をひかれます。
例えば、ベトナム北部の中国との国境付近にあるドン・ヴァンというジオパーク。ここには、ハノイからクルマで10時間かけて訪れたことがあるのですが、カルスト台地の高い山と深い谷からなる壮大な景色と、カラフルな民族衣装を纏った少数民族の人々が本当に素晴らしかったのを、今でも鮮明に覚えています」
東京から3時間ほどでアクセスでき、海と山が織りなす見応えのある景観を楽しめる伊東・城ヶ崎エリアは、ジオパークの入門として絶好の場所だと秋田さんは語る。
太平洋プレート、北米プレート、そしてフィリピン海プレートという3つのプレートがひしめき合う本州において、唯一フィリピン海プレート上に位置する伊豆半島。約2000万年前には、数百キロも南にある海底火山群だったが、やがてフィリピン海プレートの上にできた火山島がプレートとともに北へ移動。約60万年前に本州と衝突し、現在のような半島になった。
そんな途方もなく古の時代の地質学的な環境によって生み出された、壮観な自然に惹かれ、秋田さんは時折カメラを携えて、この地を訪れるのだという。
アイルランド北端の海岸線を思い起こさせる壮観な城ヶ崎海岸
秋田さんがこの日まず向かったのが、一碧湖だ。約10万年前の噴火でできた火山湖で、周囲の木々や山々を映し出す美しい湖面から、「伊豆の瞳」と謳われる。
夜が明けたばかりの湖で、穏やかな湖面や枯れ木をレンズに収めると、秋田さんは湖畔のベンチに腰を下ろし、しばし静寂を楽しんだ。
「伊豆の瞳と呼ばれるほど山々が美しく湖面に映し出されると聞いていたのですが、今日は曇り空でそれは叶いませんでした。でも、少し風があったおかげで、水面に起こる微妙な光の変化を撮影できました」
再びディフェンダーのドライバーズシートに収まると、秋田さんは南へと15分ほどのドライブを楽しんだ。到着したのは、数十メートルの険しい断崖が9キロにわたって連なり、岩礁と崖、そして打ち寄せる激しい白波が織りなす雄大な景色が楽しめる城ヶ崎海岸だ。約4000年前に、近くの大室山が噴火した際に流れ出した溶岩によって形成されたとされている。
「城ヶ崎海岸には小学校のときに遠足で来たのが最初ですが、写真家になってからは本当によく訪れていますね」
肩に掛けた真新しい「バチューオリジンネオ」のキャリーオールからカメラを取り出すと、秋田さんは断崖ギリギリの所まで注意深く歩を進め、シャッターを切り始めた。
「このような危険を感じる場所でこれまでも撮影してきましたが、いい作品を撮りたいという使命感からか、カメラを持っていると不思議と恐怖心が和らぐんです」
秋田さんが城ヶ崎海岸に来ると思い出すのが、アイルランド北端に位置する断崖絶壁の海岸線だという。
「世界遺産に登録されているジャイアンツ・ゴーズウェイ(巨人の石道)というところなのですが、溶岩やマグマが固まってできた柱状節理という独特な地質が、城ヶ崎海岸と同じなんです。切り立った崖や奇岩が織りなす景色も本当に似ています。海外のようなダイナミックなロケーションに出合える城ヶ崎は、被写体としても本当に魅力的なジオパークです」
不思議な浮遊感のある風景が楽しめる大室山と小室山
次に秋田さんが向かったのが、約4000年前の噴火により城ヶ崎海岸を形成した大室山だ。標高580メートル、お椀をふせたような独特なフォルムの独立峰で、麓からリフトで頂上まで登ることができる。今度は最もコンパクトな「キャリオール」にカメラ1台だけを収め、頂上を目指す。
リフトを降りると、目前に直径300メートル、深さ70メートルの大きな噴火口跡が現れ、辺りを見渡せば、富士山や箱根の山々、伊豆諸島や房総半島、条件がいいときには東京スカイツリーや横浜ランドマークタワーまで望める、360度の大パノラマが展開される。
秋田さんは、噴火口跡を時計回りで周回する「お鉢巡り」をしながら、その圧倒的な景色にレンズを向けた。
「大室山は外観もユニークですが、山頂に登ると広がる、不思議な浮遊感のある風景がとても印象的ですね」
30分ほどかけてお鉢巡りを終えると、大室山からも望める小室山に向けてディフェンダーを走らせた。
約1万5000年前の火山噴火により、しぶきが降り積もってできた小室山。リフトでアクセスできる山頂には、ループ状の遊歩道「小室山リッジウォーク“MISORA”」があり、そこから相模灘の方向に視線を向けると、海と空による紺碧の世界と一体化したかのような不思議な感覚を覚える。
秋田さんは併設する「Café・321」のコーヒーを片手に絶景を眺めながら、ゆったりとした時間を楽しんでいるようだ。
「眼下に見える、相模灘を背景にした川奈ホテルの重厚な佇まいがとても素敵ですね」
そう静かに語ると、秋田さんは今日の宿であるその「川奈ホテル」を目指した。
国内外の著名人や各界の要人たちに愛されてきた、日本を代表するクラシックホテル
「ホテルオークラ」の創設者として知られる大倉財閥二代目総帥、大倉喜七郎。彼がホテルオークラのオープンよりも28年早い1936年に開業した川奈ホテルは、日本を代表するクラシックホテルである。開業以来、併設される名門ゴルフコース「川奈ホテルゴルフコース」とともに、国内外の著名人や各界の要人たちに愛されてきた。
1954年には、マリリン・モンローとジョー・ディマジオが新婚旅行の際に宿泊。アメリカの大富豪、ロックフェラーは川奈ホテルのロケーションにいたく感動し、ここをモデルにハワイ最高峰と称されるゴルフリゾートをつくったといわれている。
昭和天皇と今上天皇も滞在されており、執務のために使用したテーブルと椅子が、今も残されている。
当時のままの姿を今にとどめる本館のメインエントランス前にディフェンダーを停め、館内へと歩を進める。すると、まるでタイムスリップしたかのようなクラシックな空間が広がる。
秋田さんは、トラベルグッズを収めたボストンタイプの「クラシックダッフル 48」をポーターに預けチェックインを済ませると、さっそくロビーに。
「この空間、建築そのものから装飾や家具に至るまで、すべてにわたってダイナミズムが感じられて、本当に素晴らしいですね。豪快でありながら、繊細でもあるんです」
イギリスでの留学経験が長い創設者、大倉喜七郎は、英国貴族たちが楽しむカントリーライフに憧れを抱いたという。それゆえ、川奈ホテルは「イギリスの城」をテーマにつくられた。
大理石と伊豆石を用いた大きな暖炉や、左右対称に配置された大理石の柱、そして魔除けの意味を持つという悪魔に剣と薔薇の彫刻など、とりわけロビーには大倉喜七郎のこだわりと情熱が随所にちりばめられている。
秋田さんは、80年以上の時が刻まれた重厚な空間にレンズを向け、ひとしきりシャッターを切ると、メインバーへと足を運んだ。
川奈ホテルに共通する魅力
「川奈ホテルには前にも訪れたことがあるのですが、改めて見事なクラシックホテルだと感じました。創設者である大倉喜七郎氏の思いを、ホテルに携わる方々が大事に継承して、当時の佇まいを丁寧に維持している。それでいて、必要な部分は時代に合わせてアップデートしているから、現在でも一流のリゾートホテルとして快適に過ごせるんです」
「バチューオリジンネオ」にも同様の魅力を感じたと、秋田さんはいう。
「デザインや機能性、耐久性など、ボブ・リーさんの思いやこだわりが結実した要素をヘリテージとして継承しつつ、現代の技術でさらに進化させているのが素晴らしいですね。
冒頭でお話しした通り、僕は普遍的なものが好きで、クルマはXJSという30年前のクラシックなジャガーを、エンジンや足まわりなどをアップデートしながら乗っています。時代を越えても色あせない普遍的な美しさを感じるからです。
ハンティング・ワールドのバッグも川奈ホテルも、さらに今回の足となってくれたディフェンダーも、唯一無二のヘリテージを継承しながら進化しているという点で、まさに普遍的な魅力があると思うんです」
「HUNTING “THE NEW” WORLD!」(未知なる世界に出かけよう!)というブランドのテーマにも共感を覚えると、秋田さんは語る。
「私が旅においても、普段の生活においても大切にしているのが、『冒険とエレガンス』という言葉です。ちなみにエレガンスとは、心が洗練されていることだと考えています。
SNSで何でも簡単に知ることができる時代ですが、実際にその場に行き、自分の目で確認し、空気を肌で感じ、人々と交流して未知なる文化を学ぶ。そうやって冒険を重ねることで人は洗練されるし、それが新たな冒険への活力につながると思うんです。このような考え方は、ボブ・リーさんの人生や哲学とも重なるのではないでしょうか」
歴史を感じさせる重厚なカウンターテーブルで年代もののスコッチウィスキーを味わいながら、そう語る秋田さん。彼の“未知なる世界”への新たなる冒険が幕を開けるのは、そう遠くない日のことだろう。
秋田 大輔
写真家。世界各地の優れたライフスタイル、人物、食文化、建築インテリア、工芸品など幅広く撮影し雑誌、広告などでグローバルに活躍。また海外でのアートプロジェクト、写真展も多数行い、英国立ヴィクトリア&アルバート博物館で開催された「FOOD・BIGGER THAN THE PLATE」展のメインビジュアルに作品が使用された。
ハンティング・ワールド
掲載商品の詳細はこちらからご覧ください
一碧湖
静岡県伊東市吉田字藤原815-360
駐車場:70台
https://nationalpark-ippekiko.jp/
城ケ崎海岸
静岡県伊東市富戸842-242
市営門脇駐車場:126台
大室山
静岡県伊東市富戸1317-5
TEL:0557-51-0258
大室山登山リフト
駐車場:500台(第1駐車場~第3駐車場)
小室山リッジウォーク“MISORA”
川奈ホテル
静岡県伊東市川奈1459
TEL:0557-45-1111
https://www.princehotels.co.jp/kawana/
DEFENDER 110 SE P300(COUNTY EXTERIOR PACK)
ボディサイズ | 全長 4945 × 全幅 1995 × 全高 1970 mm
ホイールベース |3020 mm
車両重量 | 2240 kg
エンジン |ターボチャージ付直列4気筒DOHC
エンジン排気量 | 1995 cc
変速機 | 電子制御式8速オートマチック
最高出力 | 221 kW(300 ps) / 5500 rpm
最大トルク | 400 N・m/ 2000 rpm