フェラーリやランボルギーニをあなたが購入しようと決断し、ショールームへ行ったとしよう。現在、フェラーリで最も手頃なモデルは約2800万円〜のオープンモデルであるポルトフィーノMであり、ランボルギーニは約3000万円のSUVであるウルスとなる。そしてどちらもそのプライスタグ通りの価格にはならない。セールスからは色や仕様を選べるコンフィギュレーターのパネルを見せられ、あれやこれやオプションを選ぶことになる。実際、オプション無しではかなり貧相な仕様になってしまう可能性が高いのが現在のハイパフォーマンスカーでもある。だからオプションが山ほど加わり、その合計額が500万円を超えることはフツウとされている。

2009年に登場したカリフォルニアシリーズの後継モデルとして2017年から販売されているポルトフィーノM。価格はほぼ3000万円だが、一応フェラーリのエントリーモデルとなる。
2018年にランボルギーニが投入したSUVのウルス。新車価格だけで言うとウルスのV8モデルがランボルギーニでは最も安いモデルとなる。

無事、発注したとして、あなたのクルマはフェラーリやランボルギーニであればイタリアにて生産に掛る。基本的にこれらのモデルは受注生産だから、完成してからイタリアからは長い船旅を経て日本に到着する。場合によっては平気で3年かかることもあったし、現代もオーダー内容によっては起こりうる。そんな買い物はそうそう存在しないだろう。

しかし、こんな不思議な価格、状況にあっても高級車メーカーの、特に勝ち組の業績はきわめて良好だ。2023年度、フェラーリの年間生産台数は1万3663台、ランボルギーニは1万112台と、両ブランドともなんと最高記録を更新している。

ランボルギーニの象徴ともいえるガルウイングドアとV12エンジンを採用したレブエルト。新車価格はウルスが可愛く見える6000万円。もちろん買える人はごく限られている。

これらのクルマは一台あたりの単価が高い。さらにモデルの販売期間も長いから、一台あたりの利益率も高い。しかし、それだけではスーパーカービジネスは成立しない。

実は高級車メーカーにとって、年間生産台数よりも重要なのは、各社が言うところの「受注残=バックオーダー」なのだ。これは顧客が注文をし、製造過程にあるデリバリー前のクルマ達のことだ。これは需要に供給が追いついていないということを意味する。彼らはこの数字に一喜一憂する。マーケットにクルマが飽和し、売れ残ってしまったら、ビジネスが成立しなくなるからだ。

これらの高級メーカーは、顧客に「誰でも直ぐに入手できるクルマではありませんよ」という”希少性”を提供し、買い手はその満足感を含んだ金額を支払うというシステムなのだ。重要なのは高額であり、デリバリーまで時間もかかったとしても、それに見合った満足を顧客に与えることができる点だ。そのブランド戦略がしっかりと成功しているからこそ、成立するマーケットなのである。

購入希望者よりも少ない生産台数で価値を上げる手法は、高級車メーカーの基本戦略。近年ではランボルギーニが名車カウンタックの後継であるLPI 800-4を世界限定112台で販売。もちろん即完売となった。

フェラーリの創始者であるエンツォ・フェラーリは昔からそういうブランドビジネスの機知をよく理解していた。「次のニューモデルは何台売れそうだ? ああ100台か。それなら99台を作ることにしよう。そうすれば、買いそびれた一人は次モデルではもっと本気で買おうとするだろうし、この事実も良い宣伝になる」と。

エンツォはフェラーリが品薄で簡単に買うことができないという神話を創り続けたのだ。

フェラーリのブランド力を日本のクルマ好きに植え付けた代表車がフェラーリのブランド40周年に作られたF40。購入希望者多数で価値があがり「走る不動産」というニックネームまで付けられた。

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