センチュリーを独立したブランドに
今回は「ワクワクする未来を、探しに行こう!」をコンセプトに、参加社数は過去最高の522社・団体を数え、10月30日〜11月9日までの会期中にはのべ101万人の観客が訪れた。印象としては輸入車ブランドの少なさや、ビッグサイトという箱の制約もありモーターショーに期待する華やかさのようなものは薄れたが、サプライヤーの技術展示など見応えのあるものも多く、モビリティショーと呼ぶにはふさわしい現実に即した内容だと感じた。
ハイライトは南展示棟に集約されたトヨタグループ(トヨタ、レクサス、センチュリー、ダイハツ)で、中でももっとも注目を集めたのは「センチュリー」のクーペコンセプトだった。ショーに先駆けトヨタはセンチュリーをトヨタともレクサスとも違う、別格のTop of Top、One of Oneの独立したブランドにすると発表していた。プレスデイのセンチュリーの発表会に登壇した豊田章男会長は次のように述べた。
「センチュリー。その名の由来は、明治100年とも、トヨタグループの創始者・豊田佐吉の生誕100年とも言われておりますが、私は“次の100年をつくる”という意味に受け止めております。そして、センチュリーに刻まれた鳳凰のエンブレム。鳳凰とは、世界が平和な時代にのみ姿を見せる伝説の鳥です。センチュリーは、単なる車名ではありません。世界の平和を心から願い、日本から“次の100年をつくる”挑戦。それこそがセンチュリーなのだと思います」
こうきたかと思わされる、ひとり勝ちするトヨタだからこそできる攻めの一手だと感じた。思えばロールス・ロイスもベントレーも、セダン、クーペ(&オープン)、SUVをラインアップしている。奇しくもこのJMSでは2シーターオープンの「メルセデス・マイバッハSL」が発表された。これからのラグジュアリィカーブランドにおいては、ショファーカーとしてだけでなく、ときにはドライバーズカーにもなるクーペが重要な鍵を握るのかもしれない。さらにトヨタのもう一手は、ダイハツのオープン軽自動車「コペン」。なんと次期型はFR(後輪駆動)車として開発中で、開発ドライバーを豊田章男会長自らが務めるという。いいかえれば次期コペンがFRになるのは決まったようなもの。仕上がりにも大いに期待できる。
モビリティショーらしいバラエティに富んだ内容で楽しませてくれたのはホンダブース。小型ビジネスジェット機のHondaJetがお出迎え、その奥にはなんとロケットの姿が。これは再使用可能な機体と再生可能燃料を使った環境負荷の低いサステナブルロケットの実験機。実際にテストで使われたものでモックアップにはない、オーラがびしびしと伝わってくるものだった。二輪、四輪、耕運機、船外機など陸・海・空をはじめ宇宙領域にわたる幅広い展示のなかでクルマ好きの注目を集めたのが小型EVの「Super-ONE Prototype」。昔なつかしいシティターボIIを彷彿とさせるモデルで、すでに開発も最終段階にあり2026年中の発売が予定されている。
マツダは「VISION X-COUPE」と「VISION X-COMPACT」という2台のコンセプトカーを展示。「VISION X-COUPE」はロータリーエンジンをベースとしたPHEVで、微細藻類由来のカーボンニュートラル燃料と独自のCO2回収技術の組み合わせでCO2を削減するという。マツダはロータリーエンジンを諦めないという意思表示ととれた。
日産は2026年夏に発売予定の新型「エルグランド」や、2027年度前半に国内発売予定の「パトロール」をはじめ、プレスデイのみ欧州仕様のコンパクトEV、マイクラ(日本名マーチ)を展示。日産の2025年1−9月の国内販売台数で前年を上回っているのはエルグランド、フェアレディZ、生産終了したGT-Rのみであり、この新型マイクラにe-POWER(ハイブリッド)仕様があったならと無い物ねだりをしてしまうが、とにかく売れるモデルの投入が急務である。またスバルは2台のSTIコンセプトモデルと北米で人気の「ウィルダネス」シリーズのプロトタイプを、三菱は次期パジェロとも噂される電動クロスオーバーSUVのコンセプトカー「ELEVANCE Concept」を初公開した。
輸入車ブランドとしては、メルセデス・ベンツ、BMW/MINI、BYD、Hyundaiと、商用車部門にはKiaが登場。メルセデスAMG初の独自開発EVである「CONCEPT AMG GT XX」をアジア初公開。このためにメルセデスAMG CEO兼メルセデス・ベンツ社トップエンドモデル部門責任者であるミヒャエル・シーベ氏が来日し、プレゼンテーションを行った。また会期中はブース内にメルセデスオーナーのみがコーヒーや軽食などでひと息つける「メルセデスコンビニ」を開設。日本独自のおもてなしが好評だったようだ。
BMWは2026年夏以降の導入を予定する新世代のノイエ・クラッセ(=新しいクラス)第1弾となる「iX3」を展示。またミニファンにはおなじみのミニ「ポール・スミスエディション」を世界初公開。プレスカンファレンスには、ポール・スミス氏本人も登場するなど、メルセデスもBMWも日本市場に対する期待を感じさせるものだった。
BYDは日本の軽自動車規格にあわせたEV「ラッコ」を発表。発売は2026年夏を予定する。またKiaはEVバンの「PV5」を公開。フレキシブルな車体構造を活かしミニバン、商用車、福祉車両など最大16ものバリエーションが展開可能という。2026年春の発売予定でPV5カーゴが589万円から、PV5パッセンジャーが679万円からと戦略的な価格設定となっている。BYDにせよKiaにせよ、企画から開発までそのスピード感にはただただ驚く。軽自動車やバンといった実用車領域のEVにおいて、中韓メーカーの台頭を予感させる。
今回のショーで気になったのは観覧動線の悪さ。東京ビッグサイトの大規模改修工事期間にあたってしまったことで東展示棟 (1~3ホール)が使えず、初めて南展示棟をつかうことに。南展示棟にトヨタグループを集めたことで観客は回遊を余儀なくされるわけだが、南展示棟の端から東展示棟の端までは成人男性でも徒歩で15分ほどかかる距離があり、小さな子どもや高齢者とっては相当につらかったはずだ。モビリティショーと銘打っているわけで、ホール間の移動に自動運転車やパーソナルモビリティなどの試乗体験を盛り込むなどの工夫が欲しかった。
いま欧州ではEVの販売が伸び悩み、各社はのきなみ内燃エンジンの生産を延長する施策を打ち出している。一方でEVも内燃エンジンも並行して開発を進めることは本当に大変なのだと、会場で話を聞いたあるドイツメーカーの開発者は嘆いていた。その困難たるや推して知るべしだが、いちユーザーとしては過渡期であるがゆえに選択肢が豊富にあるとポジティブにも捉えられる。豊田会長いわくいまはまさに“100年に一度の大変革の時代”。果たして次回のJMSは何が主役になっているだろうか。