ファッションイラストレーターならではの視点で

FIRST DRIVEは公開に向けてのカウントダウンで、クルマのイラストを毎日1台ずつFacebookやInstagramなどのSNSで公開してきた。イラストのタッチは独特で、見慣れたはずのかつての名車に新しい魅力を感じたり、最新モデルなのにどこか懐かしさを覚えたりする。すべてのイラストを手がけた遠藤舞さんに、こうしたイラストが描かれた背景をうかがった。

SNSで公開されたイラストは、トランプとしてまとめることも視野に入れ、全54点となっている。54台もの名車を描いた遠藤さんであるけれど、これまで手がけてきたのはファッションなどのイラストで、クルマを主役に描いた経験はほとんどなかったという。

「化粧品のボトルやカクテルグラスなどに人物を絡めた大人ファンタジーな世界は作品に度々登場します」
「音楽配信プレイリストのデジタルカバーで採用された作品。その時々の季節感を盛り込むのが好きです」

「もともとは女性の身体のラインとか、香水のボトルとかハイヒールなど、フォルムがきれいなものを描くことが多かったんです。フォルムがきれいなもののひとつに古いクルマがあって、たまたまファッション画の背景に描いたクルマを見て、FIRST DRIVE編集部の方が連絡をくださいました。クルマについてはまるで詳しくないのでどうしようかと思ったんですが、自動車専門のフォトグラファーやイラストレーターとは違う視点で描いてほしいということだったので、そういうことならできるかもしれないと考えてお引き受けしました」

アナログな手法から生まれるスモーキーな色味

遠藤さんが描くクルマのイラストを特徴づけているのが、色調とアングル、そして背景に描かれる人物や風景だ。

まずは、クルマという機械なのにやわらかい雰囲気を伝える色調が、どのようにして生まれるのかを尋ねた。

「自分ではあまり自覚がありませんが、スモーキーな色だと言われることが多いですね。言われてみると、青い色もスカッとしたブルーよりもグレーがかった方向に振ることが多いし、少し眠い色味のベージュなんかも好きです。基本的にはデジタルで描くんですが、気にしているのはデジタルだといくらでも写実的に描けてしまうということです。道具としてデジタルは使うけれど、テイストとしてはアナログ感のあるものが好きなので、色の出し方や光と影のグラデーションはものすごくアナログな表現方法で描いています」

斜め後ろから俯瞰したり、真横から見上げたり、一般的な自動車写真とは異なるアングルについてはどうだろう?

「編集部の方から、それぞれのクルマが一番格好よく見えるアングルをご提案いただいて、話し合いながら進めました。描きながら、確かにこの角度だとこのクルマの力強さが強調されて格好いいな、とか思ったり。自分でも資料を探してみたんですが、クルマはアングルによって雰囲気ががらっと変わるので、奥が深かったですね」

トランプに用いるイラストは、クルマ単体の全体像が描かれている。一方でSNSで発信されたものは、インスタグラムに向けて正方形にトリミングするのと同時に、背景や人も描きこまれている。背景や人物を含めて、クルマをどのように切り取るかは遠藤さんに一任されたという。

「切っちゃうのはもったいないと思ったんですが、私が普段描くイラストでもがっつりトリミングしているケースが多かったんです。見えない部分を見ている人が想像力をふくらませる、みたいなところが好きなんですね。人物の顔を描かないのも同じ理由で、見てくださる方が想像して補完してくださるといいな、と思っています」

気がつくと、うっとりしながら描いていた

背景に描かれる人物も魅力的だ。たとえば1970年代の初代フォルクスワーゲン・ゴルフの横に立つ女性は、当時のファッション誌から抜け出してきたようでもあり、今日の表参道を歩いていそうでもある。フェラーリ・ローマの隣に立つハイヒールを履いた女性は、スニーカーを手に持っている。つまり自分で運転してきて靴を履き替えたという、ローマというクルマのキャラクターに合った物語を暗示しているのだ。

「人物像も相談しながら進めたんですが、人物とからめて描くというのはすごくイメージが湧いて描きやすかったです。たとえばポルシェのタイカンは、“渋谷のMIYASHITA PARKにいそうな、ストリートっぽい若者が乗るイメージ”だと言われて、ふ〜ん、そうかなと思ったんですが、実際に描いてみるとすごくフィットしたり。モノそのものだけじゃなくて、それを取り巻く時代の感覚や空気感を描くことがイラストでは大事だと思っているんですが、タイカンを描きながら、いまの時代ってこういう感じだよな、と腑に落ちました。でも最後まで腑に落ちないのもあって、たとえばフェラーリのモンツァSP1はすばらしいフォルムなんですが、最後までオーナー像が思い浮かびませんでした(笑)」

実際に54台を描いてみて、難しかったのはどのクルマでしたか、と尋ねると、「テスラのサイバートラックは難しかったですね」という答えが返ってきた。

「最初に資料を見た時はシンプルすぎて絵になるのかなと心配だったんですけれど、描いてみたら意外とかわいかった。でもほかと比べると平面的になってしまったので、コントラストを強くして、未来っぽい陰影をつけました」

では、描いてみて欲しくなったクルマは?

「マセラティのクワトロポルテですね。第一印象ではマセラティなのに華やかさがないなと感じたんですが、資料でインテリアを見たらレザーとウッドの組み合わせがすごく素敵でした。そうしたら外見も格好よく見えてきて、派手じゃないけど大人っぽいという点にグッときて、こういうクルマに乗ってみたいと思ったんですね」

トランプ用に描いたことから、実は54点のイラストのなかには2枚のジョーカーが含まれている。「いかつくて、悪そうな感じのパトカーにしちゃおうかな、と思いながら描いたら、思ったよりお洒落に仕上がりました」と遠藤さんはいたずらっぽく微笑む。どのクルマをジョーカーにしたのかは、想像する余地を残すという遠藤さんの作風にならって、ここでは明かさずにおこう。

最後に遠藤さんは、「エレガントだったり格好いいなぁと思うクルマを描いていると、恍惚としてしまうというか、気がつくとうっとりしながら手を動かしていました」と笑った。クルマはプロダクトとしても美しいけれど、それをアーティストの視線で見ると、時代背景や場所、オーナーたちの物語があいまって、また違った魅力が浮き彫りになる。FIRST DRIVEは、そうした多様なクルマの楽しみ方を提案するメディアを目指したい。

販売決定!!

遠藤舞さんが描いたクルマのイラストをMakuakeで応援購入いただけます。
購入いただけるアイテムは3種類!

① InstagramやFacebookに投稿していた54枚のイラストをフレーミング(額装)して販売いたします。(各イラスト限定1名様)
② 「自分の愛車を描いてもらいたい!」という方のために、オリジナルで遠藤さんに描き起こしていただく「世界で1枚だけのオリジナルアート」(限定3名様)
③ 54車種のイラストで作ったトランプカード。ジョーカーに捕まらないように気を付けて!

① フレーミングしたイラストで自分だけの空間づくりを。
② 世界で一枚だけのオリジナルアート例。 一番大きなA1サイズはリビングでも存在感のある1枚に。
③ 54車種が並ぶトランプで様々なゲームを楽しんで。

家族や仲間とクルマ談義にも花が咲きそうなトランプゲーム。

素敵なクルマを眺めているだけで、おうち時間がより豊かになるイラストアート。

などなど、クルマをもっと身近に、気軽に楽しんでいただければと思います!

それぞれMakuakeで8月23日(月)より「応援購入」を開始いたしますので、ぜひご覧ください。

※販売商品のイラストはデジタル制作による作品の、オリジナルプリントとなります。

販売スタート:8月23日(月) https://www.makuake.com/project/firstdrive/

イラストレーター 遠藤舞

東京都出身。文化服装学院卒業後、グラフィックデザイナーとして勤務したのちフリーランスに。2018年よりイラストレーターとして活動。ファッションやライフスタイル、ビューティーなどのモチーフをデザイン的な視点で描く。雑誌、音楽媒体、広告、web等多方面で活動中。

https://extraflat.amebaownd.com

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