クロノグラフの始まりは1822年。競走馬の能力=走行タイムを計測するための機械として開発された。その当時はまだ大きな箱型だったが、技術進化と共に小型化されると、計測計器として様々なジャンルに用いられるようになる。
その一つが自動車で、走行時間を計測して燃料計算を行う「ダッシュボード・クロノグラフ」が開発された。時計会社はこれをきっかけに自動車業界やモータースポーツ業界とのつながりを深め、その蜜月関係は今も続いている。
計測のための実用機構であったクロノグラフは、使用目的によって様々なデザインやメカニズムが開発された。その多様性には驚くばかりだ。常に動力ゼンマイを巻き上げて最大トルクを発揮する自動巻き式や、クラシカルな味わいがある手巻き式、航空用クロノグラフや1/100秒まで計測できる高性能機もある。しかもクロノグラフはスポーティなデザインだけではない。時間を操るという哲学的な魅力は知的階層をも魅了し、ドレスウォッチのようなエレガントなクロノグラフも数多く誕生している。
デザインと機構の両面で、様々なスタイルを楽しめるクロノグラフは、“時計沼”へとはまり込んでいくちょうどいい入口なのである。