1年で150品種以上―シェフが生産する食材
埼玉県の秩父といえば、山登り好きには知られた場所。百名山に名を連ねる両神山もあれば、家族でのぼれる宝登山まで、楽しみの幅が広い。今回紹介させていただく「クッチーナ・サルヴェ」は、もうひとつの秩父の魅力。秩父駅から至近という立地であるいっぽう、東京などから訪れる、うまいもん好きも多いそうだ。
地元出身のオーナーシェフ、坪内浩さんが同店を開いたのは2018年。地元の食材を活かした料理を提供してくれる。ファン層は厚いようで、東京から関越自動車を使ってドライブしてくるひともいれば、西武池袋線「西武秩父」駅を使うひとも。

同店の特徴は、坪内シェフによるていねいに仕上げられたイタリア料理であることに加え、食材の多くをシェフみずからが生産するところにある。「1年に150品種以上作ります」と言うオーガニック野菜をはじめ、小麦粉の薄力粉も強力粉も、さらに養鶏場も営み、鶏も卵もつくる、という徹底ぶり。
今回取材のために作ってくれたのは、ランチコース。無肥料の自然栽培で作った葉もの野菜をメインに構成された前菜プレートと、メインとして武州和牛ヒレ肉のグリル。地元の牛肉を使ったグリルは、オーブンを活用しつつ、芯の温度をチェックしながら、ていねいに火入れされたのにも感心した。

野菜はひとつずつが味わいぶかい。サラダのようにフォークでまとめて口のなかにほおりこんではもったいないと思うほど。フォッカッチャ(イタリアで食べるパンのひとつ)も、シェフが育てた小麦粉を使っていて、甘みがじわっと舌に浸みるかんじだ。
上記の前菜プレートには、イタリアふうオムレツともいえるフリタータも載る。坪内シェフのブランド「プラチナたまご」で作られたものだ。「おいしいものではなく、ホンモノの玉子を作りたい、と思って、育てあげた鶏が生んでくれたものです」とはシェフの弁。
徹底的に自然食材にこだわる
10代に飲食業のおもしろさを知り、22歳でダイニングバーを秩父駅ちかくに開業。その後、イタリア料理の奥深さに惹かれて、現在に続く業態を手がけることに。同時に、食材へのこだわりが強くなっていったそう。

坪内シェフが徹底的ともいえるほど自然食材にこだわるのは、理由がある。じしん、化学物質がいっさいダメな体質なのだそう。自分が安心して食べられるものを自分の手で作る。それが、クッチーナ・サルヴェの基盤になった。
「食材ってこだわるとどこまでいっても終わらないんですが(苦笑)、これが楽しいんです」。認定農業者の資格を取得して、農園の土づくりから手がけ、さきに触れたとおり、養鶏場を管理し、シイタケをはじめとするキノコ類も原木で、と説明してくれる坪内シェフの顔を見ていると、たしかに幸せそうだ。

もちろん、自分で生産できない食材でも最高を追求すると坪内シェフ。たとえば牛。取材のときメインで出た武州和牛や深谷和牛といった地元の黒毛和牛をはじめ、岩手の放牧牛、ニュージーランドで牧草で育てられたものを使う。
ポークは武州豚。プロシュット(生ハム)やサルメリア(肉加工品)は武州豚で坪内シェフみずからが作るそう。魚は、シェフが最高と信じる島根の浜田港で水揚げされたものが送られてくる。白トリュフやオリーブオイルやバルサミコ酢はイタリアからの取りよせ。凝っている。
クッチーナ・サルヴェのもうひとつの魅力は、温かみだ。料理人が作る雰囲気もさることながら、手づくりのドライフラワーがあしらわれた室内は落ち着く。さらに、レストランが入る建物は、秩父神社の表参道(番場通り)にある、古民家をリノベーションした複合施設。これもまた、いいかんじなのだ。



「秩父表参道Lab.」と名づけられていて、クッチーナ・サルヴェに加え、秩父の地ビール秩父麦酒のオフィシャルタップルームである「Mahollobar (まほろバル&カフェ)」、2階はレトロモダンを謳う民泊施設 「Chichibu Hostel」になっている。夕食を楽しむために泊まるゲストのための施設といえる。「秩父表参道Lab.」は、坪内シェフを含めて兄弟3人で運営とのこと。それが温かさの理由かもしれない。

東京・新宿からだと、花園インターチェンジまで90キロ少々。ドライブとしてはちょうどいい距離だ。乗っていったのは、メルセデスAMG「GLB35 4MATIC」。2021年1月に日本発売が開始された、高性能SUVである。
全長4650ミリ、全高1670ミリの車体に、225kWの最高出力と400Nmの最大トルクをもつ1991cc4気筒エンジンを搭載。8段オートマチック変速機を介して前後4つの車輪を駆動する。

ベースになっているGLBがそもそも、いい出来である。ハンドリングや乗り心地など、すなおな操縦感覚を、メルセデスAMGバージョンではうまく伸ばしている。高性能版なので”強化”といったほうがいいかもしれないが。
2830ミリと長いホイールベースを持つ3列シート車で、室内は余裕がある。3列シートはおとなにはキツいものの、2列シートを使うかぎり、家族でゆったりと乗っていられ、しっかりした脚まわりは路面の凹凸をていねいに拾ってくれるので、100キロていどの距離は疲労感皆無。



感心するのは、ハイパフォーマンスブランドのメルセデスAMGだけあって、コーナリングが得意科目であることだ。リミテッドスリップデフが組み込んであるため、オフロードでも効き目がありそうだが、きついコーナーを回っていくとき、効果は顕著。内側の駆動輪のグリップが弱くなったとしても、外側輪が影響を受ける度合いは低い。スポーツカーなみに、ぐいぐいと走っていく。

直進安定性にもすぐれ、深雪はともかく、基本的には全天候型といえる。このクルマがあれば、毎週末にでも、秩父まで足を伸ばしてクッチーナ・サルヴェを訪れたくなる。「夏と冬との温度差が大きい秩父は、それゆえ、食材にも恵まれていて、レストランには最適な環境」と坪内シェフ。その言葉を信じて出かけていって、ぜったいに損はない。

「クッチーナ・サルヴェ」
埼玉県秩父市番場町17-14
Tel. 0494-22-6227
http://www.salvagest.jp/
ランチ(11時半~13時半ラストオーダー)
ディナー(17時半~22時)
ディナーコースは6600円、8800円、1万1000円で構成(要予約)