EVが増えたら、二酸化炭素は減るのか?
英国政府がエンジン車の販売を2030年までに禁止すると発表したことが話題となった。ジャガーが2025年よりEV専業ブランドになることをアナウンスするなど、これから自動車の電動化が進むことは間違いない。
その一方で、刺激的な見出しに目を奪われることで、問題の本質を見失ってしまうことには注意する必要がある。自動車を愛するわれわれは、環境問題や持続可能な社会をどのように捉え、どのように行動すべきなのだろうか。正しい判断をするために、問題の本質を冷静に理解するところからスタートしたい。
問題の本質を理解するところから始めよう
1880年からの約140年間で、世界の平均気温は1. 09℃上昇している。原因は、表1に示した二酸化炭素濃度の上昇で、産業革命以前より約40%も増加している。二酸化炭素濃度の上昇は、地球温暖化をもたらすだけではない。海洋に取り込まれることで海水の酸性化が進み、生態系に影響を与えることも指摘されている。また、気温が1℃上昇すると大気中の水蒸気の量が7%増えることから、近年の豪雨災害も温暖化が主因だとされている。
したがって、私たちは早急に二酸化炭素の排出量を減らす必要がある。ただしここで知っておくべきは、自動車だけが二酸化炭素を排出しているわけではないことだ。表2に示したように、輸送で排出される二酸化炭素は畜産より少ないほどで、最も多くの二酸化炭素を排出しているのは発電なのだ。
二酸化炭素をバンバン出しながら発電した電気で走るEVは、地球温暖化抑止に貢献していると言えるのだろうか?いくらEVが増えても、発電を見直さなければ二酸化炭素は減らないのではないだろうか。
表3の2017年における日本の電源構成を見ると、8割以上が化石燃料由来、つまり二酸化炭素を排出しながら発電した電力になっている。
たとえば地熱発電が3割、水力発電が7割のアイスランドのような国だったら、全車をEVにすることで自動車による二酸化炭素排出はゼロになる。けれども、表4を見るとわかるように、先進国の多くが化石燃料を燃やして発電している。
ここで考えたいのは、いまの状態でEVを増やしても、本質的な解決にはならないということだ。同時に、これが唯一の正解というものは存在しないことも理解しておく必要がある。水に恵まれた土地、太陽がさんさんと輝く地域、地熱や温泉が身近なエリア、風が強い場所。それぞれの風土に合った形で自然エネルギーを増やしていくことで二酸化炭素の排出を減らすというのが、現実的な解答ではないだろうか。
EVに乗り換えるだけでなく、ライフスタイル全般から考えることが、持続可能な社会を築くことにつながるのだ。