『たべるたのしみ』
甲斐みのり/著(mille books)
文筆家・甲斐みのりのおいしい味の記憶を綴った54のエッセイ集。「旅のかけら」、「おやつの記憶」などの章ごとに分けられ、東京や京都など各地で出合った味、家族や友人との食の思い出が綴られている。読んでいるとちょっとお腹が空いてくる。さまざまな食の風景を楽しむことができる一冊だ。
『海色の壜』
田丸雅智/著(双葉文庫)
短編作家・田丸雅智の海にまつわるショートショート集。20篇の作品から構成されていて、一話あたり5分程度で読むことができるのだが、その短い時間の中で奇想天外な世界へ惹き込んでいく作品力には脱帽。あっという間に読み終えてしまうが、何度も読みたくなる不思議な魅力を持っている作品。
『海苔と卵と朝めし: 食いしん坊エッセイ傑作選』
向田邦子/著(河出書房新社)
脚本家・向田邦子の食にまつわるエッセイ集。「思い出の食卓」、「旅の愉しみ」など6章、29篇のエッセイを収録している。食にこだわりを持った彼女の食卓、味、料理の記憶を追体験できる。料理を描く文章のリズムがなんとも心地良い。食いしん坊の食への素直さと面白さが伝わってくる一冊。
『昨夜のカレー、明日のパン』
木皿泉/著(河出文庫)
夫婦脚本家・木皿泉による小説。亡くなった夫の義父(ギフ)と一緒に暮らす妻(テツコ)の物語。ギフとテツコが若くして亡くなった夫(ギフにとっては息子)の死を受け入れながら、生前の夫と関わりのあった不思議な登場人物たちと繰り広げる日常には、喜びや切なさの欠片があふれていて心がゆっくりと落ち着いていく。
『芸術家たち 建築とデザインの巨匠 編』
河内タカ/著(オークラ出版)
楽しみながら、読んで学べる建築とデザインの世界。興味があるけど、少し難しく感じる芸術やデザインの入門書にピッタリの一冊。名前は知っているが、どんな建築物を建てたのか知らなかった日本の建築家や、教養として知っておきたいデザイナーなどを分かりやすく解説している。建築とデザインの巨匠たちの可愛らしくゆるめのイラストもナイス。
『猫が見ていた』
湊かなえ 有栖川有栖 柚月裕子 北村薫 井上荒野 東山彰良 加納朋子/著(文春文庫)
猫をこよなく愛する豪華執筆陣による猫への愛をこめて書き下ろした全7篇の猫小説アンソロジー。それぞれの小説に描かれている猫と人間たちの日常は、不思議と気持ちがほっこりする。次の物語はどんな猫がでてくるのだろう、とついつい最後まで一気に読んでしまう。旅の途中で道行く猫を見かけると、きっと何かが起こるのではと、想像と妄想が膨らんでいく。