重厚感と軽やかさを併せ持つ、稀有な存在

「less is more(より少ないことは、より豊かである)」「God is in the detail(神は細部に宿る)」という名言を残したことで知られる、ドイツ人建築家のルートヴィヒ・ミース・ファン・デル・ローエ。彼が手がけた「バルセロナチェア」のシンプルでエレガントな佇まいは、まさにそれらの言葉を体現する存在だ。

流れるような美しい曲線で脚部とクロスして一体になるフレームは、鏡面仕上げのクロームスチール。溶接した後に職人の手で丁寧に磨かれている。シートクッションと背もたれのクッションは、フレームのカーブにフィットするようにデザインされ、くるみボタンがアクセントに。

フレームのしなやかなラインが美しいサイドからの眺め。背もたれと座面には、それぞれ20枚のレザーとくるみボタンを手縫いでつなぎ合わせている。(W750×D770×H770×SH430mm)
スツールタイプはチェアと組み合わせれば、オットマンとしても。「バルセロナスツール」(W590×D595×H390mm)

そんな「バルセロナチェア」が誕生するきっかけとなったのは、1929年に行われたバルセロナ万博。ミースが手がけたドイツパビリオンで、当時のスペイン国王アルフォンソ13世夫妻を迎えるためにデザインされたものだった。モダニズム建築の傑作といわれるパビリオンの建物は、万博終了後に取り壊されたものの、ミース生誕100周年に当たる1986年に博覧会当時と同じ場所に復元され、「ミース・ファン・デル・ローエ記念館」として公開されていて、もちろん「バルセロナチェア」も今もそこで使われている。 ミース・ファン・デル・ローエはドイツ工作連盟のリーダーやバウハウスの校長を勤めた後にアメリカへ移住、アーマー大学(現イリノイ工科大学)建築学科の主任教授になった。そこで生徒として出会ったフローレンス・ノルを通じて、ノル社に「バルセロナチェア」の製造を依頼する。ノル社はステンレススチールを用いてX字のフレーム加工をこれまでにないクオリティでかなえ、ミースの家具すべてのライセンスを取得したのだそう。現在もオリジナルの設計に忠実に作られているチェアは、その彫刻的なフレームと手仕事を感じさせるクッションで、どんな空間も美しく引き立ててくれる。

クッションを支えるのは、背面8本、座面9本のレザーストラップ。丁寧な手仕事とクラフトマンシップが背面にも現れている。
クロスしたメタルが脚部から背もたれへと延びる形状は、デザインされた当時の椅子としてはかなり斬新でセンセーショナルなものだったという。

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