Keicondo

1981年、茨城県笠間市生まれ。2006年に茨城県窯業指導所(現:茨城県立笠間陶芸大学校)に入所し陶芸を学ぶ。卒業後はJICAの海外派遣に参加し、2年間南米ボリビアで陶磁器隊員として笠間焼の技術を伝える。帰国後、笠間市にアトリエを開いて独立。定期的に個展を開催するほか、異業種のクリエイターとタッグを組んでワークショップを開くなど、陶器の魅力を伝えるべく精力的に活動中。素材を引き立てるよう色や形を追求した器は、料理家からの支持も厚い。
Instagram:@keicondo

一期一会の出合いを求めて出かける

「こぢんまりとした骨董品屋さんで、店内に一歩足を踏み入れるとタイムスリップしたかのようなレトロな空間が広がっています。アンティーク雑貨だけでなく面白い本も並んでいて、置いてあるもの一つひとつに目がいき、いつも楽しくてつい長居してしまうんです」とKeicondoさんから聞いてやって来たのは「内町工場」。

窯元やギャラリー、カフェなどが軒を連ねる、益子のメインストリートへと続く昭和レトロな商店街の一角にひっそりと佇む、古本と古道具の店だ。

静かに音楽が流れるノスタルジックな店内には、所狭しと物が置かれているのだが、それぞれにきちんと居場所があり、心地よい整然さがある。

店内にあるものは棚やスツールも含め、基本的にすべて商品。焼き物関連の美術本、小説、雑誌など幅広いジャンルを揃えた古書から、かつてアフリカで使われていたという槍先型貨幣のような貴重な古道具、古民家で使われていた食器棚や本棚といった家具まで、カルチャーが息づく益子ならではのユニークなアイテムとの出合いがある。

Keicondoさんの言葉通り、見れば見るほど新しい発見がある。まるで宝探しをするかのような、ワクワクした気分を味わえる。

今年で11年目になる「内町工場」。「今日はどんなものがあるだろう?」と足繁く通う地元の客も多く、老若男女さまざまな人が集う憩いの場として地域に根付いている。

それにしても、古本・古道具屋であるにもかかわらず、一体なぜ「内町工場」という名なのだろうか?

「この辺りは内町地区という地名で、うちの店ももともとは工場だったんですね。工場ならなんでも取り扱えるのではという理由で名付けました」と話すのは店主の佐藤一貴さん。

爽やかな笑顔が印象的な店主の佐藤一貴さん。

佐藤さんはもともと、隣町のギフトショップで働く営業マンだったそう。知人から紹介されたこの場所との出合いがきっかけとなり、開業を決めた。

「販売だけでなく買い取りも行っているため、置いているものは本当に多種多様です。この辺りには文化的背景をもつ面白い方たちがたくさんいらっしゃるので、マニアックなものやユニークなものが自然と集まってきますね」

あなたも一期一会の出合いを求めて、出かけてみてはいかがだろうか。

内町工場

〒321-4217

栃木県芳賀郡益子町益子897

Tel:0285-81-7840

営業時間:11:00〜18:00

定休日:水曜日、第1・第3月曜日

60年代カルチャーに触れ、美味しいピッツァを堪能する

買い物を楽しんだ後は、石窯で焼き上げられたナポリピッツァに舌鼓を。

Keicondoさんが「景観も良くリラックスできるお店ですよ」と紹介してくれたのは、「雨巻山」の登山道入口にある「茶屋雨巻」。自然の懐に抱かれるように建つ木造の小屋は、ジブリ映画にでも出てきそうなほっこりとした佇まいだ。

従来のお腹にたまる重たい生地とは一線を画す、軽い食感のピッツァは、ペロリと何枚でも食べられてしまいそう。その秘密は、ミネラルをたっぷり含んだイタリア産ピッツァ専用粉にあるという。耳が厚いのに、ふわっと軽くてやわらかいピッツァは、まさに絶品。わざわざドライブして食べに行く価値がある。

不動の人気を誇る「マルゲリータ」とたっぷり野菜の「地元野菜のグリーンサラダ」、自家製ドリンク「はちみつレモンジンジャー」。

「ピザを食べる度に思い出す印象的なお店です」というKeicondoさんの言葉にも頷ける。

昔イタリア料理をやっていた店主が、益子の知人からヒノキ林だったこの場所を紹介され、遊び半分で始めたというピッツァ作り。だが次第に噂が噂を呼び、人が集まるようになり、増築を重ねて今の形になったという。気づけば今年で11年目。はじめは壁すらなく、屋根だけだったというから驚きだ。今では地元客はいうまでもなく、陶器市の時期には全国から客が集まる人気店となっている。

窯のモザイク装飾に使われているのは、東日本大震災で割れてしまった陶器のかけら。

訪れた際に注目してほしいのは、店主の趣味が詰め込まれたこだわりの内装。店の中央には真空管アンプなどのレトロな音響機器が据えられ、壁には1960年代を中心とするジャズやロックのレコードジャケットやポスターが飾られている。店主はもともと音楽関係の仕事をしていたと聞いて、マニアックさの理由が分かった。

森深いこの環境で、60年代カルチャーに触れ、美味しいピッツァを頬張る時間は唯一無二。ドライブがてら、ぜひ訪れてみてほしい。

茶屋雨巻

〒321-4212

栃木県芳賀郡益子町上大羽1234

Tel:0285-77-5354

営業時間:11:30〜15:00

定休日:月曜日・火曜日

築70年前の蔵を改装したギャラリー

この旅の最後に訪れたのは、「外観からは想像できない、繊細な陶器が並んでいるギャラリーです」とKeicondoさんが太鼓判を押す「pejite益子」。

実は、今回取材したショップの店主からも名前の挙がることが多かった店だ。

青々とした蔦の葉で覆われた趣ある佇まいは、この辺りに数多あるギャラリーの中でも特別な存在感を放つ。

約70年前に建てられた蔵を改装したという広々とした空間には、明治〜昭和初期に作られた日本のアンティーク品をリペアした家具や、益子を中心とした作家の器、シンプルながらもあたたかみのある服など、こだわりの商品がセンス良く並べられ、凛とした空気が漂う。

ここにあるのは、すべて日本の丁寧な手仕事が感じられるものばかり。それぞれにストーリーがあり、作り手の想いが込められている。

洗練された空間で実際に商品を手に取り、その質感や表情を味わいながらゆっくりと吟味できるのは、最高の贅沢ではないだろうか。

特筆すべきは、無垢の木の質感を生かした家具。

やわらかな物腰が印象的な店長の佐藤さん。

何を隠そう「pejite益子」は、益子で絶大な人気を誇る古家具店「仁平古家具店」の姉妹店にあたる。確かな技術を持った職人によって、再び命を吹き込まれた家具たちは、中にしまう器や雑貨をやさしく包み込み、より美しく見せてくれるのだ。

使い込むほどに馴染み、使い手の色に染まっていく家具は、一生の相棒になるに違いない。

一生モノとの出会いを求めて、わざわざ足を運ぶ価値のある店だ。

pejite益子

〒321-4217

栃木県芳賀郡益子町益子973-6

Tel:0285-81-5494

営業時間:11:00〜18:00

定休日:木曜日

http://www.pejite-mashiko.com/top/

茨城県芳賀郡益子町
TODAY
H:19 L:13
  • FRI
    H:19
    L:12
  • SAT
    H:24
    L:11
  • SUN
    H:19
    L:13
  • MON
    H:20
    L:11
  • TUE
    H:18
    L:10
  • WED
    H:14
    L:12

陶芸家・Keicondoさんがお薦めする笠間・益子のドライブデスティネーション 【笠間編】

東京からクルマで、約2時間でアクセスできる茨城県笠間市と栃木県益子町は、関東を代表する二大陶芸産地。県境を挟んで隣接する2つの町は「かさましこ」の愛称でも親しまれ、春や秋に行われる陶器市では日本全国よりやきものファンが集まる人気のエリアだ。今回は、自身も陶芸家として活躍するKeicondoさんがお薦めするスポットを2回にわたり紹介する。1回目は、Keicondoさんの地元であり、活動の拠点でもある笠間。ゆったりとした空気がただよう静かな里山には、自然の恵みを五感で感じられる癒しの空間があった。

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