日本はいま空前のサウナブーム。なんでもこのブームは昭和30年代、平成初期に次ぐ第三次らしいのですが、身体をあたためるだけだった従来のサウナと異なり、サウナによる温浴→(水風呂などによる)冷浴→外気浴をワンセットとしてとらえ「ととのう」というキーワードまで登場した本格的なもの。サウナを愛する人々が「サウナ―」と呼ばれ、マンガ『サ道』もドラマ化されるなど、日本におけるサウナはいま爛熟期を迎えたといっても過言ではないでしょう。
「ととのう」とはいったいどのような状態なのか? それは多くのサウナ―が医学におけるサウナの効用や効果的な入浴法を解説していますので、それらガイドブックを参照いただくとして、ここでは旅のデスティネーションとしてのサウナの魅力をご紹介します。ガイドしてくれるのは、サウナが好きすぎて自社ビルの最上階に本格的なフィンランドサウナ施設を造ってしまった森實敏彦さん(株式会社タマディック代表取締役社長)。
森實さんいわく「日々心配事やストレスに悩まされがちな社長業も、毎朝サウナに入ることでゼロにリセットされます。また自社サウナを社員と共有することでコミュニケーションにも役立っています」と良いことづくめのサウナ。
生活の拠点としている名古屋から上京し、週の半分ほど滞在するという東京では「パークハイアット東京」の「クラブ オン ザ パーク」が定宿ならぬ定サの森實さんですが、地方に出かける際には必ずどこかによいサウナがないかリサーチしてから出かけるのが常だそう。
「いや、むしろそこにサウナがあるから出かけることもよくあります(笑)」
ひとはなぜ山に登るのか? 「そこに山があるから」とは英国人登山家マロリーの有名な返答だと言われていますが、森實さんの場合はサウナファースト。まさにそのために出かける「デスティネーション・サウナ」をドライブで出かけやすいロケーションから厳選していただきました。
森實敏彦 TOSHIHIKO MORIZANE
株式会社タマディック代表取締役社長。慶應義塾大学卒業後、外資系IT系企業を経て2000年自動車、航空・宇宙、FA・ロボティクス分野を中心に設計・開発業務を請け負う総合エンジニアリング企業であるタマディック入社、02年から現職。
【森實敏彦さんおすすめのデスティネーション・サウナ】(順不同)
ume, yamazoe(奈良県)
「ここはまさに『デスティネーション・サウナ』でしょう。だってほかに何にもない、奈良奥大和の小さな村に突如として現れた1日3組限定の宿なんです。
築100年の古民家を改修したスペースにはとくに贅沢なものはないけれど、その何もないことに癒される他にはないタイプのリゾートです。電波もあまり届かないからデジタル・デトックスにもよいかもね」
サウナは野外のフィンランド式で、すごくやわらかく温まります。近くで伐採されているナラやクスの木の薪の入れ方なのかな、温度が上がりすぎないから、ゆっくりと楽しめる。贅沢な大和茶のロウリュで温まり、大きな水がめで冷水浴。その後は天井テラスで外気浴してワンセット。3セットもこなしたら、すっかりリセットされている自分に気づくと思いますよ」
ume, yamazoe
住所/奈良県山辺郡山添村片平452
電話/TEL 0743-89-1875
*クルマでのアクセスの目安として近鉄奈良駅・JR奈良駅・奈良公園から45分。
大阪駅から1時間、京都駅から1時間30分、名古屋駅から1時間30分
*宿泊者用無料駐車場あり
*サウナは日帰りでの利用もOK。
森のサウナReplus(京都府)
「デスティネーションという言葉がつくとすごく遠いイメージがありますが、この『Replus(リプラス)』は京都駅からクルマで約30分。パワースポットとして有名な『上賀茂神社』や『アマン京都』の近くであり、伝統ある『京都ゴルフ倶楽部』に隣接しているというロケーションの良さも魅力です。さっきまで街中を走っていたのに、ちょっと入っただけで山の中にいるというその風景の変化も楽しいんですよね。
ここは理学療法士でもわる和田孝明さんの別荘でもあるプライベートサウナだから、完全予約制。サウナはフィンランドのNARVI(VELVET)の薪ストーブを日本初導入し、3か所ある水風呂は鴨川源流の天然水を掛け流しで使用。森を眺めるベンチで外気浴するのがまた気持ちいいんですよ。
料金は1日8時間単位でフィックスされているので、ひとりやふたりではなく、友人や仲間たちを誘っていくのがおすすめ。ゆっくりサウナに入って、お腹がすいたらBBQしたりして。コンロや炊飯器など基本的な道具などはすべて備わっているから便利。いつも時間があっという間に過ぎてしまう、不思議な空間です」