地元の人々から愛され続ける“ベビーシュー”

フランス菓子「マサムラ」は、松本市に複数の店舗を展開する1966年創業の老舗洋菓子店。松本市民はもちろん、市外からもその味を求めて多くの人が訪れる有名店だ。

今回訪ねたのは、松本駅からほど近い市の中心部にある「マサムラ 本店」。本社工場の併設された本店にあたる。

店の中央に設えられたL字型のショーケースには、たっぷりのクリームや季節のフルーツなどを使った色とりどりのケーキや焼き菓子がずらり。どれにしようかと迷いながら選ぶワクワク感は、大人になっても変わらない。目にも鮮やかなスイーツを前に、思わず顔がほころんでしまう。

店内奥に設けられた喫茶スペースでは、ショーケースの中のケーキ類や紅茶やコーヒーが楽しめる。

嬉しいのは、イートイン可能な喫茶スペースがあること。レトロでクラシカルな雰囲気が漂う空間でのティータイムは格別だ。カップやお皿などもどこか懐かしさを感じさせ、心地よい“昭和モダン”な世界観にどっぷりと浸かることができる。

看板スイーツは“ベビーシュー”の愛称で親しまれる「ベビーシュークリーム」。創業当時から50年以上にわたりつくり続けられているロングセラー商品だ。ショーケースには、粉糖をふわりとまとった小ぶりな“ベビーシュー”がぎっしりと並ぶ。

手土産にも人気の看板スイーツ「ベビーシュークリーム」1個 ¥173

軽いシュー生地の中には、生クリームを合わせた濃厚なカスタードがたっぷり。頬ばると、口の中いっぱいにやさしい甘さが広がる。

「良い素材を使い、丁寧に仕上げていくことだけを考えています」と話すのはオーナーの正村氏。素材の良さを最大限に生かした、昔ながらのシンプルな味わいこそ、この店の真骨頂と言えるだろう。

マサムラが目指してきたのは、土地に根ざした味。冬は湿度が低く、寒暖差が大きい松本の気候に合わせ、濃厚で甘い味わいを意識しているという。それを聞いて、地元民から愛され続ける理由が分かったような気がした。

上から時計回りにピーチシャンテリー¥497、ショートケーキ¥475、マッターホーン¥562。
黄色いリボンがあしらわれた包みも可愛らしい「オレンジラメル」(Mサイズ)¥2,700。

この日も地元の常連客と思しき人たちが次々と訪れ、店内は活気に満ちていた。

松本土産としても絶大な人気を誇るマサムラのお菓子。ショッピングがてら、せっかくならイートインでもぜひ味わってみてほしい。

マサムラ 本店

〒390-0815

長野県松本市深志2-5-24

Tel.0263-33-2544

営業時間:9:00〜18:00

定休日:火曜日

松本の歴史が薫る、築135年の蔵で供されるナチュレフレンチ

次に訪れたのは、松本の食の魅力を余すところなく堪能できる、とっておきのお店。

旧善光寺街道に面して立つ間口15mに及ぶ重厚な蔵屋敷が、目的地のレストラン「ヒカリヤ」だ。フランス発祥のトップホテル&レストランの会員組織「ルレ・エ・シャトー」の栄えあるメンバーでもある。

土蔵造りの家が多く残る松本の城下町でも「ヒカリヤ」の重厚な佇まいはひときわ目を引く。

それもそのはず、ここはかつて名門商家「平林家」の建造物「光屋(ひかるや)」だったという。一時は取り壊しの危機に瀕していたが「松本の歴史が薫る蔵造りを後世に伝えたい」という現オーナーの願いのもと2008年にリノベーションされ、約130年の時を経てレストラン「ヒカリヤ」へと姿を変えたのだ。

母屋をそのまま生かした日本料理の「ヒガシ」、漆喰の蔵を改築してつくられたフランス料理の「ニシ」という和洋2つのレストランから成る「ヒカリヤ」。

2つを繋ぐのは、隅々まで手入れが行き届いた緑あふれる中庭。エントランスとなる母屋の廊下を抜けた先には、ため息が出るほど美しい光景が広がる。

この場所で「唯一無二の食体験」を追求し続けているのが「ヒカリヤ ニシ」で総料理長を務める田邉真宏氏。ヨーロッパで研鑽を積んだ腕利きのシェフだ。

「ヒカリヤ ニシ」の総料理長を務める田邉真宏氏。

明治時代の趣を残した蔵で供されるのは、マクロビオティックに基づくナチュレフレンチ。

地元農家によるオーガニック野菜を主役とするフランス料理は、芸術作品さながらの美しい見た目と、厳選された素材の風味を生かした繊細な味わいが特徴。

食材だけでなく、この土地の土や風の匂い、川の音などからもインスピレーションを得てつくりだされる料理は、ひと皿ごとに異なる驚きと感動をもたらしてくれる。

燻製の香ばしさが食欲をそそる「人参の燻製と筑摩産の杏のミルクレープ」。口に運ぶと、上にまぶされたカラスミの香りもふわりとただよう繊細な一品。
香り豊かな長野県産のキノコをふんだんに使った「柿とキノコとフォアグラのムースのタルト」。
クチナシが上品に香る鮮やかな黄色の大根ソースが、絶妙に火入れされた弾力のあるハタを引き立てる「ハタの炭焼きと大根のソース」。

「地方にいてこそできることがあると思うんです。流行りの真似事ではなく、この環境下でしかできないことを突き詰めていきたいと思っています」と話す田邉シェフ。

器には、松本で活動する作家さんの作品を使うなど、食を通して松本の文化や歴史を発信しているのも印象的だ。

「松本には一生懸命頑張っている人たちが数多くいます。地域の人たちと一緒になって、松本という土地を盛り上げていきたい。その結果、観光客が増えて、ヒカリヤで食事をしてくれる人も増えてくれたら嬉しいですね」

日本の伝統と西洋の文化が見事に融合する、趣ある内装も魅力のひとつ

そして次のように言葉を足した。

「自分のやりたいことと、周りからのフィードバックを重ね合わせながら、少しずつ進化させ、お客様に何度も来ていただけるお店にしたいですね」

現状に満足することなく、邁進し続ける田邉シェフ。松本の魅力が詰まった「ヒカリヤ ニシ」の料理は、ロングドライブのご褒美としてまさにふさわしい価値がある。

ヒカリヤ ニシ

〒390-0874

長野県松本市大手4-7-14

Tel.0263-38-0186

営業時間:ランチ11:30〜14:30(最終入店.13:00)

定休日:水曜日

 

※2023年1月21日(土)より営業時間が変更となります。

ランチ11:30〜14:00(最終入店13:00)※土日祝および連休中のみ

ディナー17:30〜22:00(最終入店19:30)※月火木金土および休前日

詳細は店舗に直接お問い合わせください。

http://www.hikari-ya.com

vol.2
#ロードサイド ストーリー
山々に抱かれた、歴史と文化が息づく城下町へ。松本のドライブデスティネーション(後編)
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