【イギリス車】
60年代から現代に至る、英国車の伝統とは?
1960年代のジャガーEタイプにローラス・エランS1、そして21世紀に入ってからのTVRタスカンS6、現行モデルのマクラーレン570S、さらには展示されていた最新のジャガーFタイプ。こうしたイギリスのスポーツカーが一堂に会する光景を見て思うのは、「ストイックだなぁ」ということ。華やかに飾るのではなく、あくまで機能を優先した設計やデザインになっている。現代のマクラーレン570Sにしても、あれだけ尖ったデザインなのに、運転席に座ると驚くほど視界がよく、運転もしやすい。「イギリスの伝統」というのはいろんな場面で聞くフレーズであるけれど、スポーツカーにも確かにそれがあることを会場で実感した。
【ドイツ車】
新旧のドイツ車を眺めながらポルシェ博士を思う
新旧さまざまのドイツ車を見ると、ひとりのエンジニアの顔が思い浮かぶ。フェルディナント・ポルシェ博士だ。第二次大戦前はダイムラー・ベンツの技術部長としてレーシングマシンやエンジンの名機を開発。その後、フォルクスワーゲン・タイプⅠ(ビートル)を開発し、ポルシェを立ち上げたのはご存知の通り。アウディの中興の祖であるフェルディナント・ピエ匕は博士の孫だから、戦後の多くのドイツ車は博士に通じることになる。会場を歩けば、ポルシェ912から現行のタイプ992に至るまで、いつの時代もポルシェ911が愛されていることがよく分かる。同時に、もしポルシェ博士がいなければ、自動車大国ドイツはまったく別の姿になっていたかもしれない、とも思わされた。
【イタリア車】
機械というより、楽器の音
イエローのフェラーリ308GTB、空色のランチア・ストラトス、真っ赤なマセラティ・ビトゥルボ──。イタリアのクルマを見ながら思うのは、原色が似合う、ということだ。ストイックに感じた英国製スポーツカーとは対照的で、明るくて官能的なのがイタリア車の個性だということがよくわかる。排気音も、重厚なイギリス車、ドイツ車と比べると「ファーン」と華やかで軽快。英独車の排気音が機械の発する音だとすると、イタリア車は楽器の音のようだ。こうした違いが、目と耳といった五感で感じられることがCARS&COFFEEというイベントの素晴らしいところだろう。コロナ禍で海外旅行もままならないけれど、会場でちょっとした世界旅行を味わった。