黄金色のダイニング空間
ラ・ヴィラでRCRの3人に別れを告げると、次の目的地であるホテル「レス・コルズ・パベヨーンズ」へと向かう。
この建物に足を踏み入れてまず驚くのは、エメラルドグリーンのガラスを幾重にも重ねて作られたホテル全体の世界観だ。透き通る壁、そして通路や客室から見上げる大空など圧倒的な開放感だが、計算された室内設計と、背高く生い茂る植栽の効果で、外の空気を大いに感じながらプライベートは確保されているという不思議な空間に設らえられている。ここにも屋外と屋内の境界を意図的に曖昧にするRCRの特徴を見て取ることができる。
客室は禅の思想が反映されたシンプルな空間で、什器、設備においても必要最低限が徹底されている。また、メインの部屋から外に向かって開ける縁側的なスペースには、日本の坪庭からインスピレーションを得た庭園が隣接している。スペインの片田舎に赴いて枯山水を目の当たりにするとは予期すらしていなかったが、室内にいながら自然の一部となるような錯覚を感じさせるこの空間を体験したいと世界各国から“建築巡礼の旅”に訪れる人は絶えないという。
侘び寂びの料理
このホテルがRCRの明確なコンセプトのもとゼロから作った新築施設なのに対して、その隣に建つミシュラン2つ星レストラン「レス・コルズ」は、リノベーションの力作だ。外観はアースカラーをまとったカタルーニャ地方特有のカントリーハウスだが、店内に入るやいなや、純金にペイントされた数十人は優に着席できる“超”長テーブルが目に飛び込んでくる。さらに周囲を囲む壁からダイニングチェアーにいたるまで金、金、金といった圧巻の空間だが、RCRの遊び心が感じられてどこか嬉しい。
この空間でいただく料理を手がけるのは、スペイン人シェフのフィーナ・プイグデバル。彼女の料理のスタイルを端的に表現するならまさに「Less is More」で、余分なものを極限までそぎ落とし、最後に残るものを最重要な食材として、オリジナル料理の世界観を作り上げていく。
テイスティングメニューは、150ユーロ、190ユーロの2コースがあり、同じく敷地内にある自家菜園で採れた野菜やポークをはじめとする地元産の食材を用いた料理を思う存分堪能できる。 RCR同様、日本の侘び寂びに究極の美意識を見出すプイグデバルの料理を建築行脚とともにぜひとも楽しんで欲しい。