駿河湾に浮かぶ見慣れぬ富士

東名高速を西進するルートには慣れている。今回の旅人、FMラジオ局「J-WAVE」でナビゲーターをつとめるnicoさんは、白浜や多々戸、大浜といった伊豆半島の東側にあるサーフスポットに毎年のように足を運んでいるためだ。しかし今回の目的地は西伊豆。半島に入ってからも西へ進むそのルートは辿った記憶がなく、おそらくは人生で初めて踏み入れるエリアという。期待を胸に、鮮やかなブルーを纏ったメルセデス・ベンツC-Classステーションワゴンを駆って最初の目的地「大瀬崎」に向かうと、駿河湾沿いを走る県道へ出た瞬間、見慣れない光景があらわれた。海越しに見える富士山だ。

日本の湾で最も深い駿河湾の海はどこまでも青く、その背後にそびえる雄大な富士山は初春のため雪を纏い、早朝であったことから薄紅色をわずかに纏っていた。穏やかで、厳かな、あまりに印象深い1日の始まり。高揚感が生まれたのか、nicoさんは顔をほころばせているように見えた。そして駿河湾に1kmほど突き出した岬である大瀬崎は、海越しに富士山をのぞむ絶景が古くから知られる名勝地であり、国が天然記念物に指定するビャクシン樹林が群生する貴重な場所である一方、スキューバダイビングのメッカとしての顔を持つ。なるほど、陸から目にする海が素晴らしく美しいわけである。

静岡県唯一のクラフトジン蒸留所へ

雄大な景色を前にしながら早朝のフレッシュな空気を吸い込むと、気分新たに次の目的地「沼津蒸留所」を目指すことにした。ここは2020年にオープンした静岡県内で唯一となるクラフトジンの蒸留所。一度市内に戻る形にはなるが、1泊2日の旅の相棒を手に入れようと考えたのだ。

ほどなくして到着した「沼津蒸留所」ではスタッフの永田暢彦さんが出迎えてくれた。聞けば、大麦由来の原酒を蒸留し、ジェニパーベリーを軸に地元産のボタニカルを漬け込むことで、沼津ならではのクラフトジンを造っているのだという。現在販売しているのは4種類。沼津市内で採れた金柑、金木犀、和紅茶をメインに11種類のボタニカルを使用した「スモーキーゴールド」、沼津特産のみかんやたちばなを使った「シルキーシトラス」、河津町の薔薇をキーボタニカルとする「ヘブンリーローズ」、松崎町で無農薬栽培されたレモングラスを使用した「シャイニーレモングラス」だ。

テイスティング用のボトルをnicoさんが開けると、ふわっと甘い香りが漂った。永田さんに勧められてジェニパーベリーを口に含む。するとnicoさんは「うわ、ジンの味わいがする」と言葉にし、「ジンが植物由来のお酒であることを再認識しますね」と続けた。「早速味わってみたいですね」と飲む気満々の様子さえ見せるが、まだドライブは始まったばかり。「アルコール度数が42度と高いので、トニックやグレープフルーツジュースなどで割るのがいいですよ」という永田さんの言葉に頷き、先を急ぐことにした。

伊豆でもっとも美しい峠へ

静岡県を代表する都市・沼津を離れたあとは、伊豆半島を縦走する形でひたすら南下。伊豆縦貫自動車道の月ヶ瀬ICで降りると西へ向かい、土肥峠に至るとさらに南へ。沼津からおよそ1時間を要し、ようやく仁科峠にたどり着くことになる。

この標高約900mの仁科峠は眺望が素晴らしく、“伊豆でもっとも美しい峠”という呼び声もある。展望台からは駿河湾や富士山が望め、その先には雪を被った南アルプス連峰までが見えた。真っ青な空は大きく、海はキラキラと輝いている。山と海が近接し、そのどちらも楽しめる西伊豆の豊かさをひと眼にして把握できる場所だった。

日本でもっとも早咲きの桜――土肥桜

噂以上の美景に満足感を覚え、今度は進路を海岸線へ。まずは伊豆市土肥にある松原公園に向かい、続けてシーサイドロードを堂ヶ島方面へ。松原公園には“日本でもっとも早咲きの桜”と言われる土肥桜に春気分を期待し、また堂ヶ島は「日本の夕日百選」に認定されている場所である。

「水平線を目指して沈みゆくその夕景もまた、絶景そうな予感がするな」

未明の東京出発ながら夕暮れ間際でもnicoさんの美声は明るく楽しげに響いてくる。それは間違いなく、西伊豆が織りなす壮観なランドスケープに魅了されている証だった。

nico

ラジオと自然をこよなく愛し、サーフィンの技術向上と語学習得のために、アメリカ、オーストラリアに滞在。
メキシコなど各国で車中泊をしながら旅やサーフトリップをしていた。

ライフスタイルはサーフカルチャーをベースにした音楽や映画、ファッション、車、旅から影響を受けている。
現在、アワードや記者発表などの次世代MCとして期待されるなか、サーフィンの国内や国際大会の実況を務める。

2020東京オリンピック サーフィン競技 会場MC/表彰式司会
J-WAVE NAVIGATOR/NSA JUDGE CLASS B 取得者

@nicostagramtokyo

仁科峠
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ラジオパーソナリティnicoさんと行く西伊豆 【アクティビティー編】
古道が整備された“東京の裏庭”を遊ぶ

堂ヶ島よりわずか南にある松崎町を拠点とする「BASE TRES」で、 西伊豆のトレイルを疾走するMTBのツアーに参加。 しっかりと手の行き届いた山林を駆け抜け、楽しい汗を流す!

ラジオパーソナリティnicoさんと行く西伊豆 【堂ヶ島編】
雄大なランドスケープが満載のシーサイドロード

地形が入り組むため、海に沿って走るたびに異なる美景が現れる。 奇岩の存在感に目を奪われる景勝地や、高い透明度の美しいビーチなど、 コーストラインには楽しいドライビングを叶える魅力が溢れている。

ラジオパーソナリティnicoさんと行く西伊豆 【サンセット編】
カリフォルニアとシンクロする“太陽が海に沈む町”

海岸が西を向く西伊豆は太陽が海に沈む太平洋側では希少なエリア。 そのため声すらも失う絶景を見つめながら1日を終えることができるのだ ビーチを包み込む幻想的な雰囲気はカルフォルニアのそれと見事に重なる。

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