Drive Music Selection
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西田尚美

作品選びでもっとも大切にしている2つのこと

−ドラマや映画を問わず、常に作品に出続けていらっしゃるイメージがありますが、お仕事を受ける際の優先事項や何か基準はありますか?

本(脚本)の面白さが一つ。二つ目にご一緒できる監督、スタッフさんを知っていると、世界観も分かりますし、再会できる喜びもあるので参加したくなります。また、最近は自分よりも年齢の若いスタッフさんが多いので、初めましての関係で参加できることも刺激になったりします。結局はその作品に参加したいと思えるような何かしら惹かれることがあるのだと思います。

−西田さんというと、近年はとくにお母さん役が多いですよね。モデル時代から拝見していたので意外にも思えるのですが、ご自身的にはすんなり受け入れられましたか。

そうですね。若い時からお母さん役に挑戦したこともあり、今では相当な数の娘と息子がいます(笑)。昔はもっと小さい子のお母さん役が多かったですけど、最近は20~30代の俳優さんの母親役がメインで、おばあちゃん役も経験しています。実際の年齢を気にして役の幅を狭めたことはないように思います。

−エッセイの連載(『オレンジページ』の「西田尚美の今日もお天気」)では、「こんな素敵なお母さんがいるのかな」と思いつつも、実際にそのキャラクターをご家庭で取り入れることもあるとおっしゃっていましたね。

子育てをしていると、平和な毎日は勿論ありません。はらわたが煮えくり返るような気持ちもありますよ(笑)。本当に予期せぬことが起こりますから。そんな時は、友達がアドバイスしてくれた「もう菩薩になるしかないよ」という言葉を思い出して、「菩薩…菩薩…」と自分に言い聞かせています。それこそ、素敵なお母さん役のセリフを思い出して穏やかに振る舞うこともありますね。それで、お互い落ち着いたタイミングを見計らって「実はあの時、私はこう思っていたんだよ」と話し合うと、案外、娘も素直に聞いてくれます。お互いヒートアップしている時はどうしても悪循環になりますし、うまくいかないですからね。

今でもそういったケンカは頻繁にあるんですか?

今はいい意味でお互い諦めているのかもしれません(笑)。どこか、達観しているというか……たまに、お互い気持ちが抑えられなくなることもありますけど、対応の仕方に娘も慣れてきたというか、大人になったのかもしれません。

思春期の娘との付き合い方。そして、“推し活”における自分なりのスタンス

−幼少期の西田さんとお母さま。現在、母親である西田さんと娘さん。いま、娘さんとの関係性を通してお母さまとの記憶が蘇ることや、何か思うことがあったりしますか?

早くに母を亡くしているので比べる事ができませんが、母は厳しく物静かな人でした。娘はおしゃべりということもあり、よく話し合いますし、私と娘の在り方は、母との関係において築けなかったように思います。娘の成長を見守る中で、夫や私の容姿や性格や仕草など、こんな細部まで似るんだなと発見することがあります。私の子供の頃は母とは顔が似ていなかったのですが、大人になるにつれ、当時の写真を眺めていると、だんだん自分がその顔に近づいていて「あれ? 母の若かった頃にすごく似ている」とある時期から気付きました。いま、母の生きていた年齢を越えていますが不思議な感じがします。

−ご両親のお仕事について、娘さんはどう思われているのでしょうか。

仕事についてはとくに何も言わないです。娘には「二人とも本当に子供だよねぇ」とは言われます(笑)。お友達のご両親にお会いして、職業や親の威厳みたいのを目の当たりにすると、うちは親子3人でただ賑やかに過ごしているので、すごく子供に映るのかもしれません。でも、今は思春期ですし生意気ですよ(笑)。子供は親に忖度もしてくれませんし。ただ、正直に向き合ってくれるだけ気は楽ですけどね。

−趣味の話も聞かせてください。お忙しい中でもK-popにハマったり、新作の映画やお笑いのライブ、舞台などに足繁く通われていますが(注:1)、表現者として常に新しいものに触れようと意識されていますか?

いえ、単純に好きなんです。自分の興味あるジャンルとかアーティストを登録しておくと色々な情報が届くんです。仕事のスケジュールを確認しつつ、この日なら行けそうだなと思ったらまずチケットを押さえたりして。取れなかったら悔しいので自分で色々と調べて探したりもします。映画もそうですけど、試写会で鑑賞するより自分でチケットを買って観た方が、感想の良し悪しも好き勝手に言えますから(笑)。好きな作品ならSNSで紹介することもありますし、知人からも「同じのを観たよ」と返事がくると、またその話題で盛り上がったりできますし。自分のペースで観たり聴いたりと行動をしているので、ストレスもないですしスタンスを守れるので気楽です。

−普段は、お一人で行動されることがお好きなんですね。

そうですね。人を当てにしているとなかなか決まらなかったりしますし、一人で行ける場所ならクルマで行きますね。この前も地方撮影で空いた時間があったので、レンタカーで窯元を訪ねたりして、すごく楽しかったです。

−SNSを拝見すると、お仕事の合間などのスキマ時間をすごく有効に活用されている印象があります。例えば、東京にいて急遽、3時間空いたとしたら、どんな過ごし方をされますか?

3時間かぁ……(しばし熟考して)観たい映画があればタイムテーブルを調べて映画館に行くか、マッサージに行ってケアするとかですね。でも、クルマに乗って一人でファミレスにも結構行きます。ドリンクバーを頼んで読書したり、ダウンロードしておいたドラマを観たり。ガヤガヤしている空間で一人というのが、意外と集中できるから台本を覚えることもあります。それこそ、ドライブの途中で安全な場所に車を停めてシートを倒してゴローンとなって、台本を読み込んだりもします(笑)駅までの移動も含めて、電車やバスを乗り継ぐのと違ってクルマだと行動が億劫にならないですよね。家から“Door to Door”で目的地まで行ける良さはすごく感じます。

−以前のインタビューで、ご家庭だとご主人と娘さん主導で計画を立てるから、自分ひとりの時くらいは好きなところに行きたいとおっしゃっていましたね。

でも夫や娘からは「本当にどんくさいなぁ」とか「しっかりしてよ!」なんていつも言われてしまいます。だから、「私は仕事だってきちんとしているし、自分一人で何だって行動できますよ!」って、怒るんですけど(笑)。どうも二人には響いていないような気がします。

ご家族で出掛けられる際は、どちらのクルマに乗られるんですか?

先日、奥多摩に行ったときは、交代で運転しようと思っていたので、私のディスカバリーで行きました。夫のクルマは新しくてまだ運転したことがないので、万が一ぶつけたりしたら、もう何を言われるか分からないですから(笑)

−インスタグラムを拝見すると、いつも旅先で美味しいものを食べていらっしゃる印象があるのですが、事前にきちんと下調べをされるタイプですか?それともあてどなく赴く感じですか?

それこそ、ぷらっと出掛けて、到着した辺りで何かその土地の名物を探したり、食べログで調べたりはします。この前は撮影で唐津(佐賀県)に行った時に、旅行好きの友達に「唐津で何かお薦めある?」と聞いたところ「美味しい豆腐屋の朝定食があるよ」と教えてもらったので、予約して食べに行きました。唐津だと「洋々閣」(注:2)というお宿があって、作家さんの陶芸品を展示しているギャラリーが併設されているんです。そこも友達に薦められたのでお伺いしてお買い物をしました。

ここ最近行かれたところで、どこかおすすめの場所はありますか?

この間訪れた上高地(長野県松本市)はすごく良かったです。それは、『新美の巨人たち』(テレビ東京)で、内田有紀さんが旅していらして「素敵だなぁ」と思いながら観ていたんです。上高地に行ったことがある友達にその話しをしたら「ハイキングするならきっと楽しいと思うよ」って勧められたので、早速調べて、運よくホテルが取れたので行ってきました。来年の夏も再訪したいと意気込んでいますので、ホテルは既に予約済みです(笑)上高地は、普通にスマホで撮った写真でも驚くくらい綺麗に写ります。ここは、スイスなんじゃないかなと思うほど美しい景色でしたね。私が訪れたのは紅葉の時期だったので、新緑の季節ならまた違った趣が楽しめるのかなと思います。

ドライブもそうですけど、家ではない「どこか」というのがすごく重要です。家にいると色々目について「あっ、これをやっとかないと」って思い始めると急に時間に追われる感じがします。旅行に行くとなると家のことはどうしようもないので「もう何も考えなくていいんだ」と(笑)。そういえば奥多摩に行ったときは、宿に携帯の電波が全然入らないし、Wi-Fiの速度もすごく遅かったんです。そうすると、逆に夫婦の会話が増えたりしてとても有意義に過ごせました。もともと、これが当たり前だったんだよねって。そういう時間がいいなって改めて気付いた旅でした。

記事注釈

(注:1)西田さんのSNSや雑誌連載では、韓国の俳優さんのファンミーティングやシソンヌのお笑いライブ、NHK朝ドラで娘役を務めた上白石萌音さんのコンサート、ウェス・アンダーソン監督の新作映画鑑賞を楽しむ姿など、プライベートな一面が垣間見える。

(注:2)佐賀県唐津市にある明治26年創業の老舗宿。木造建築による美しい佇まいの館内には、唐津焼の名陶・隆太窯やMonohanakoギャラリーを併設し、うつわの展示販売を行なっている。

西田尚美(にしだなおみ)

1970年広島県福山市生まれ。
文化服装学院在学中にモデルとしての活動をスタートし、『non-no』(集英社)などで活躍。1993年にドラマ『オレたちのオーレ!』で俳優デビューを果たすと、初主演映画『ひみつの花園』(1997年)では、第21回日本アカデミー賞新人賞を受賞。近年の主な出演作に、テレビ『カムカムエヴリバディ』(2021年)、『うきわー友達以上、不倫未満ー』(2021年)、『くすぶり女とすん止め女』(2023年)、『ひだまりが聴こえる』(2024年)、『海のはじまり』(2024年)、映画『青葉家のテーブル』(2021年)、『ヴィレッジ』(2023年)、2024年は『言えない秘密』、『傲慢と善良』、『アイミタガイ』、『十一人の賊軍』、『正体』などに出演。2025年は、ドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系 1月24日(金)22:00〜初回スタート)、『HEART ATTACK』(FOD)、映画『大きな玉ねぎの下で』(2月7日公開)。2023年からは『オレンジページ』にてエッセイ「西田尚美の今日もお天気」を連載中。

:セットアップ ¥198,000、カットソー ¥30,800ともに、フミカ_ウチダ(クリフ) 03-5844-6152

:リング(左手中指)¥22,000/アグ(アグ) agu-acce.com

:イヤーカフ ¥13,200/314(314)314jewelry.official.ec

その他、スタイリスト私物

−My Playlist for Driving−
西田尚美さんが選ぶ「わたしのドライブミュージック」【前編】

ドライブにおいて「音楽」が果たす役割は大きい。いつもの見慣れた道でさえお気に入りの曲がかかれば、車窓に映る風景は鮮やかに色付き、気分の高揚とともに別世界へと誘う。また、車内で流れていたグッドミュージックは、記憶と紐づいて、当時の思い出を呼び起こす起動装置にもなる。本連載では、毎回、クルマを愛するゲストを招いて、ドライブを想定したオリジナルプレイリストを作成。本人による選曲の解説に加え、クルマとの付き合い方から仕事やプライベートに至るまで、その知られざる素顔を探っていく。第2回は、俳優の西田尚美さんが選ぶ『秩父駅から三峯神社に向かうときに聴きたい音楽』。
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