ファッショナブルでポップなイラストの原点は、
テールフィンのついたアメ車だった!?

イラストレーターの上田三根子さんが描く絵は、誰もが目にしたことがあるはずだ。女性ファッション誌の挿絵、コミック雑誌の表紙、プレステーションの人気ソフト「ぼくのなつやすみ」のキャラクター、そしてハンドソープ「キレイキレイ」のパッケージデザイン。どの絵も、どこか懐かしく、幸せを感じさせてくれる。筆者が若い頃に在籍していたファッション誌で描いていただいていたときにも、そのように感じていたと伝えるところからインタビューはスタートした。

イラスト/上田三根子

山本

三根子先生とはずいぶん前からの知り合いで、私が在席していた雑誌「メンズクラブ」で描いていただいていて、その妹版の「mcシスター」でも描かれていました。

上田

そうですね。「mcシスター」が多くて、たまに「メンズクラブ」でも描いていましたね。

山本

「mcシスター」が提案するアイビーやプレッピーの女の子のスタイル。三根子先生が描いたイラストが、すごくかわいいなと思っていました。いまに至るまですごく不思議なのですけれど、描かれたイラストがほぼ三根子先生のファッションそのものですよね。

上田

自分が好きなファッションを描きたいじゃないですか。もちろん、ちょっとロマンチックな感じでとか制約がある場合もあります。ファッションにそういった制約がない場合、例えば実用ページに載る女の子とかになると、だいたい自分の好きな服を描いているので。昔からその辺りはあまり変わってないから、だいたい同じ。昔の絵を見ても、ほぼ同じだなぁと思いますね。

イラスト/上田三根子

山本

皆さんが手洗いで使ってらっしゃる「キレイキレイ」の商品のパッケージは、これ商品がスタートした時からですから、もう何年、三根子先生の絵がパッケージになっているんですか?

上田

これ、25年経っちゃいましたね、いつの間にか。

山本

日本だけではなく海外にも輸出していて、 他の言語のバージョンのパッケージもある。世界中に三根子先生の絵が行っていることですよね。家族の風景を描かれている場合が多いじゃないですか。お母さんがいて男の子がいて女の子がいて。これまた、楽しい風景です。それ以外にも、有名なゲームソフト「ぼくのなつやすみ」のキャラクターは三根子先生の絵でした。ああいった懐かしさを感じる夏休みの風景や家族の風景は、やっぱり描くのが好きなんですか?

上田

そうですね。あんまり自分では懐かしいとかは思ってないんですけど。なんかちょっと、ほのぼのっていうのとは、またちょっと違うんですけど。なんだろう、その子供たちと親の関係性を見て、ふと、こんなことあったなぁとか、フフッと笑えるような絵を目指していますね。

幼き日に見たクルマが走る風景に、
豊かな暮らしへの憧れを感じて

山本

三根子先生の記憶の中で、幼い頃に、最初に乗ったクルマはどなたが運転していたのか、そして、どんなところを走っていたのでしょうか?

上田

それが、うちは父が運転をしなかったんです。ただ、私はいわゆるベビーブーマーの世代で、生まれ育った埼玉の隣の街には朝霞基地の米軍キャンプがありました。川越街道という旧道が、いまはバイパスになってしまいましたが、そこに、当時のアメリカ車がバンバン走っていたんです。日本人が運転するのはトラックくらいで、あとはビュッとテールフィンが上がるようなアメ車。クライスラーやキャデラックがバンバン走っていて、それを思い出します。

山本

なるほど。 最初に三根子先生の描くイラストのファッションの話をしましたけれども、アイビーやプレッピーはアメリカにルーツがあります。幼いころに見たクルマの風景が、まさにアメリカのライフスタイルようだったので、好きなファッションにも繋がったんですかね。

上田

そうかもしれないです。 父は英語ができたものですから、基地の中の郵便局に勤めていました。基地の軍曹がウチに遊びに来たときに、アメリカのお菓子、ハーシーのチョコレートとかを持ってきてくれるわけです。なんかカッコいいなと思って、パッケージを真似して絵に描いたこともあります。まだその辺りの子は誰も履いていない時期に、ジーンズとかもプレゼントしてもらって。横縞ストライプのTシャツを合わせて。すごくかっこいいなと思っていましたね。

山本

でも、大きなアメ車の、テールフィンがついているようなクルマは、それだけを見ても豊かな感じがします。

上田

ええ。その基地の人の家族が住むハウスがありますね。そこに行くと全然違うんですよ、ライフスタイルそのものが。道は広くて、芝生で、白い家があって。日本の街とぜんぜん違う。

山本

なるほど。そういうクルマも含めてアメリカのライフスタイルに憧れがあったんですね。では、自分で免許を取ったり、10代の頃にデートでクルマに乗ったりした記憶はありますか?

上田

うん、ありますね。うちの家族で最初にクルマを買ったのは弟で、マツダの軽自動車キャロル。弟が免許を取りたてのときに乗せてもらって、下田の海に行ったのを覚えています。

山本

でもまあ、やっぱりクルマに最初に乗ると海に行きたくなる。

上田

弟はその後、ホンダのN360に乗ったりもしていました。当時私が付き合っていた男の子は、お父さんの日産ブルーバードに乗ったりしていて。その彼とは結婚したのですが、その後に別れちゃいました。クルマやバイクが好きな人で、私はいつも助手席専門だったんです。それが、私が36歳のときに父が病気で入院して、その入院したところが、環八をずっと行った、むかし米軍キャンプがあった辺りの国立の病院。環八をクルマで行けば一本で行けるのに、電車で行くとすごい時間がかかる。これは免許があったほうがいいよなと思って、仕事がすごく忙しい時期でしたが、意を決して、なんとか必死で免許を取りました。

山本

最初に買ったクルマは何だったんですか?

上田

中古車ですが、ゴルフのマニュアルマニュアル車でした。

山本

マニュアル車を選ばれたのは、こだわり?

上田

そうではなくて、その頃はオートマ限定の免許がなかったんです。だから別にマニュアルでもいいなと思って、しばらくそのゴルフに乗りました。その後に近所のヤナセでアウディのオートマを買って、オートマはこんなにも楽なんだと思いました。その後は、ずっとドイツ車でしたが、いまはフィアットのパンダ。この前はアルファロメオのジュリエッタにも乗っていました。

山本

フィアットを選んだのは、何が決め手になりましたか? スタイリング?

上田

スタイリングですね。あとは、歳を取ってくると小回りの利くクルマがいい。東京で乗るのがほとんどなので。それと、ずっとドイツ車に乗ってきたので、最後はちょっと違う、イタリア車もいいなと思って。

山本

ご自身で運転されるときって、クルマの中で音楽を聴いたりされますか?

上田

はい。スポティファイでプレイリストを作って、ブルートゥースを繋いで。でも、最近はBTSばっかり聴いていますけどね。

山本

三根子先生のもBTSマニアだったとは!

ドッグショーで活躍する愛犬を見るために
真っ赤なクルマを遠くまで走らせる

山本

三根子先生は、愛犬家で有名じゃないですか。インスタでドッグショーのポストを拝見していますが、犬と一緒にクルマでお出かけする機会も多いですか?

上田

いまは、私が足をちょっと悪くしてお散歩ができなくなってしまったので、ドッグショーのハンドリングをしてくれている甥のところに犬を預けています。先代の犬は、よくクルマに乗せて出かけましたよ。だからいまも、後ろのシートが汚れないようにカバーがしてあります。

山本

すぐに愛犬が乗れるような状態になっているわけですね。

上田

だけど、クルマにはちゃんとクレートで犬を乗せたほうが安全だと思います。何も知らないと、窓から顔を出す犬は可愛いと思いがちですけれど。

山本

子供がチャイルドシートに乗るように、ワンちゃんもクレートに乗せたほうが安全。それぞれだとは思いますが、犬はクルマに乗るのは好きですか?

上田

あんまり好きじゃない、クルマに酔っちゃう子もいる。

山本

まぁ、それは人間と一緒ですか。

上田

でも、うちの犬は大丈夫でしたね。やはり、慣れじゃないですか。だからクレートを嫌がる子もいるかもしれないけれど、小さいときから慣らしておくと、ぴょんってそこに乗るし。

山本

ドッグショーの基本的なやり方がわからないので、一度教えていただきたいと思いまして。どういった種類のショーがあるんですか?

上田

ドッグショーは、クラブ展、連合展、FCI展と規模がそれぞれ違っても、システムはほぼ同じです。1グループから10グループまであって、1グループは割と大きいシェパードとか、2グループだとドーベルマンとか、3グループはテリアとか。ウチはテリアなので、そこに出しています。4グループがダックスフンド、5グループが柴犬とかスピッツとか昔からいるような犬。そんな具合で6、7、8、9、10グループまであるんですよ。それで、それぞれのグループでいろいろな戦いがあって、グループでいちばんになった子たちが、1グループの代表から10グループの代表までが全部そろって、最後にその中から今日の一位を決める。

山本

そうか。最後は、いろいろな犬種のトップが戦う。よい子かどうかを競うんですか?

上田

ドッグショーのいちばんの目的は、その種をきれいに残すこと。いいところを後世に残していく目的があるので、その犬種のスタンダードがありまして。足から頭までは何センチとか、見た目の美しさ。それにプラス気質、テンパラメントというんですかね。シャイだったらだめだとか、その犬のいいところをいくつか。それを総合的に判断して、そのうえで、歩くときに足がまっすぐじゃなくてはいけないとか、しっぽがピンと上がってなくてはいけないとか。 ただ、ジャッジによって重要視するところがそれぞれに違うわけですよ。

山本

そうか。体操競技と一緒でジャッジする人によって違うんだ。

上田

だから、あるジャッジは、この子の姿形はいいけれど、歩くとよくないねとか、形は見劣りするけれど、歩いたときにイキイキしているねとか。だから、そのときによって違う。

山本

じゃあ、勝ったり負けたり。

上田

そうです。昨日はいちばんだったのに、今日は下の戦いで負けちゃう場合もある。コロナ禍で外国人の審査員が来られなかったんですけど、やっと来られるようになりました。

上田

先々週は千葉インターという大きなドッグショーがあったのですが、そこは会場もすごくきれいだったし、暑かったけど面白かったです。

山本

それも、クルマでお出かけに?

上田

千葉の茂原の先までクルマで行きました。だいたい静岡の先くらいまでだったら、一人で運転して行きますよ。

山本

その間、ワンちゃんたちは大人しくしているものですか?

上田

犬は前の日から行って、向こうでテント組んだりして、けっこうたいへんなんです。

山本

そうか。前入りして、そこの環境に合わせていくのか。

上田

そうそう、お手入れとかもあるでしょ。8時半にスタートとか、朝が早いんですよ。

山本

今回の千葉での大会の結果はどうだったんですか?

上田

実は、いま、うちではベテランの男の子が出ていて。

山本

犬種と名前を教えてください。

上田

ケアンテリアのジェイソンという牡犬ですが、8歳半ぐらいかな。ドッグショーにおけるベテランは、8歳以上と決められているんです。8歳以上の昔からいくつも賞を獲った名犬が揃っていて、なおかつ8歳以上になっても元気で綺麗に歩ける、そこのカテゴリーに出ています。うちには雌犬のチャンピオンもいるのですが、その子が4月に赤ちゃんが生まれたので、いまはお休みしています。ベテラン牡犬のジェイソンは、今回は両日ともにベストセカンドでした。

山本

準優勝! ベテラン勢の中での準優勝は、そうとうにレベルが高いんですね。

上田

はい。千葉インターの大会には、20頭ぐらい出ていましたからね。その中で2位、前日も2位だったので、ベテランになってから調子がいい。2位になったからといって商品をもらえたりするわけじゃない。リボンをもらえるぐらい。まあそれでもね、楽しいですよ。

山本

普通のペースに戻れば、年間どのくらいのドッグショーに行かれるんですか?

上田

毎週どこかでやっています。ただ、全部は行かない。先週は、北海道でやっていました。

山本

一緒に乗って行くかどうかは別として、ドッグショーのために犬と遠くに出かけるのは、クルマに乗るモチベーションになりますね。

上田

そうですね。なかなか、遠くまでは目的がないと行かないじゃないですか。好きでワーッとクルマで行く人もいるけど、私はそのタイプではないので。何か目的があって、そこを目指してクルマを走らせる感じ。行ったことがないところに行くわけだから、楽しいですよ。

山本

しかも、ドッグショーを開催するような場所ですから、クルマじゃないと行けない。ちょっと駅から離れたところも多いんですよね?

上田

そうです、河川敷とかね。この間の茂原でのドッグショーも山の上でした。

山本

でも、そうやってクルマでお出かけする。運転するのはお好き?

上田

うん、好き。嫌いではないですね。

山本

やっぱり、クルマがあると、行けるところが広がっていいですよ。

上田

そうですね。 いまのクルマはすごく乗りやすいし、今年は三年目で初めての車検。そんなに悪いところもないし、小さいから取り回しが楽ちんで、もうこのクルマが最後かな。

上田三根子さんは、幼き頃にテールフィンのついた大きなアメ車を見て、ライフスタイルやファッションに憧れを抱いたと話す。ずっと描いてきた幸せな家族のイラストは、そこに原風景があったのかもしれない。そしていま。家族と同じくらいに大切な愛犬がドッグショーで活躍する晴れ姿を見るために、自ら運転して、小さくて真っ赤なクルマを走らせ続けている。

上田三根子(うえだみねこ)

1949年埼玉生まれ。ポップでオシャレなイラストを1970年代から描き続ける。ハンドソープ「キレイキレイ」のパッケージやプレステーションのソフト「ぼくのなつやすみ」のキャラクーなどで描く幸せな家族像は、多くの人たちの共感を呼ぶ。愛犬家としても知られている。

 

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